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【GP2ロシア】伊沢拓也「勝つために選んだ戦略、優勝のチャンスはかなり大きかった」
ーーレース序盤は上位を走っていただけに、落胆も大きいように見えるね。でもミディアムタイヤでスタートしていたから、8周目にセーフティカーが入ってもソフトタイヤに交換することはできなかった?
「戦略として一番懸念していたことが起きちゃったんで、どうしようもないですね。僕らにとっては一番セーフティカーが入っちゃいけないタイミングで入ってしまったんで。セーフティカーが入らないことを前提として、一番速くレースを走れる戦略を選んだんです。あのポジションで走れていたんで、あのままセーフティカーが入らないでレースが続いていればチャンスはものすごくあったんですけどね……あのタイミングでSCが入った時点で僕らには勝負権はなくなってしまったんです」
ーーソフトでスタートする戦略は考えなかった?
「ソフトタイヤでスタートした方がいつSCが入っても大丈夫という意味でリスクは少なかったし、一番安全な戦略だったと思う。上位を争っている人たちはみんなそうしてましたよね。でも僕は勝つためにこの戦略(ミディアムタイヤでスタートして終盤にソフトに履き替える)を選んだんです。SCが入らなければ、この戦略の方が速かったですから。あのままSCが入らずに最後まで行っていたら、僕が勝っていた可能性がかなり高かったと思いますから。リスクは分かった上で、勝つために選んだ戦略だったんです」
ーーチームメイトと戦略を分けた?
「チームメイトと戦略を分けたわけではなくて、自分で決めました。とにかくSCを考えずに最も速い戦略を選んで、勝ちたいという気持ちで。僕はとにかく勝つことだけを狙っていましたから」
ーー見事なスタートダッシュで一瞬トップに立ったよね。
「あの写真はないでしょ? 2コーナーじゃなくて1コーナーしかダメですからね(苦笑)。(最初のブレーキングである)2コーナーまでがすごく長いんで、トップに立った方が損だろっていう感じでしたね(苦笑)。マカオのストレートみたい。でも自分がいるべき場所とやるべきことは分かっていたし、無理をしてもしょうがないのも分かっていたから。あのタイヤでずっと走り続けなきゃいけないわけですからね」
ーー2コーナーでチームメイトに首位を譲って、1周目に4位で落ち着いてからはポジションをキープしていたよね。
「まぁ、周りとは戦略が違ったんで、トップには立ちましたけど最初から周りと争うつもりはなかったんです。周りがみんなソフトタイヤで、最初の何周かは大変だろうなと思っていました。後ろから(エバンスが)追い付いてこようが抜かれようが、どうでも良かったんです。前から離れないであそこに居続けることが重要だった。それで周りがピットインして前がクリアになったところで頑張れば良いというのが僕らの戦略だったんです。ピットインした連中は絶対に中団グループにつかまりますからね。そこで僕がその人たちより速く走れば前に出られるはずだった。
実際に4番手で周りと同じようなペースで走れたので、まさに僕らが狙っていた通りの展開だったんです。そこまでは完璧にいっていたと思います」
ーーSCが入った時点でソフトに換えることは考えなかった?
「実は最終コーナーの手前くらいで『BOX』って言われたんです。ストフェルを入れようとしたけど間に合わなくて、それで僕を入れようとしたらしいんですけど、僕も間に合わなくて。でも、普通に考えたらあのタイミングでは入れないですよね。このサーキットでは(そこからソフトタイヤで最後まで走り切れる)可能性があるかもしれないと考えて呼んだみたいですけど、間に合わなかったですね。僕自身は最初からあのタイミングなら入るつもりはなかったです。ソフトのデータなんか僕らにはないんですけど、いつもの傾向からすると無理ですよね。ストフェルも24周走ったし、結果的には走り切れたかもしれないけど、あの時点ではそれはかなりギャンブルでしたから」
ーーで、SC明けのリスタート直前にターン17で激しくタイヤをロックさせてコースオフして、そこから1周で17位まで順位を落として……。
「あれは完全に僕のミスなんで言い訳はできないですけど、思っていたよりもタイヤが冷えちゃっていて、ブレーキを踏んだらロックして飛んでいってしまいました。全然無理もしていないし、ストフェルより手前くらいで踏んだんですけど、ロックして壁に当たるかと思った(苦笑)。それでコースオフしてタイヤにゴミを拾って、リズムがグチャグチャになってどんどん抜かれてしまったんです。こういうレースなんで、一度自分のリズムが狂うと渋滞の中に上手く合流できなくなって、とめどなく飲み込まれちゃうんです」
ーーレース序盤は上位を走っていて、“レースをしている”という感じだったよね。
「そうですね。ちゃんと前からスタートして、スタートも決めて、自分たちがやらなきゃいけないことを途中まではちゃんとやれたっていうレースでした。ミディアムタイヤ勢の一番前にいたわけだから、勝つチャンスは一番大きかったと思います。起きてしまったことは悔しいし、良いところまで行くレースがGP2で初めてできたんで、なんとも言えない気持ちです。でも、この戦略を選んだことに悔いは一切ないです。レース序盤は楽しかったなぁ……」
(text by 米家 峰起 / photo by 米家 峰起, GP2)
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