【2022 Rd.14 BEL】日曜 フェラーリM・ビノット代表「空力・PU効率とタイヤデグラデーションがペース差に繋がった」
ーーベルギーGPではレッドブルに完敗を喫しました。原因は何だったのでしょうか?
「今週末レッドブルと我々の間にパフォーマンス差があったことは疑いようのない事実だし、レッドブルは我々よりも速いマシンだった。ハンガリーとはダウンフォースレベルが違うスパ・フランコルシャンは、空力面とパワーユニット面の双方で効率が求められるサーキットで、そこが影響したと思われる。しかし今日はそれ以上にタイヤデグラデーションの大きさが我々のパフォーマンスに影響しており、その点はしっかりと原因を分析する必要がある。普段我々はタイヤデグラデーションが優れているからね。現時点ではその原因はクリアではないが、今後のレースで今回のようなパフォーマンス差が生じないことを願っている」
ーー予選で0.6秒もの大差を付けられましたが、シーズン後半戦は苦しい戦いになるでしょうか?
「一般的にスパは1周が長いためにギャップが大きく見えるし、空力効率・PU効率の僅かな差が大きく表われるサーキットでもある。だから今後のレースでは再びこの差が縮まることを願っているし、純粋なパフォーマンスとしてはまだ我々の方が僅かに速いと思っている。今回はタイヤデグラデーションがパフォーマンスに影響したが、その原因を究明して問題点を修正することが重要だと考えているし、残りのレースでも最大限の結果を手にするために全力を尽くすつもりだ」
ーー今回から導入されたポーポシング対策の技術指令書がパフォーマンスに影響したのでしょうか?
「それは全くない。他のチームがどうだったかは知らないが、我々はきちんと対処ができているしパフォーマンスには影響していない。今回のパフォーマンス不足は純粋に空力とパワーユニットの効率が求められるサーキットであったということによるもので、その点においてはレッドブルが優れていたということだ。そしてタイヤデグラデーションに関しても彼らの方が優れていた。だから我々としてはどうすることもできなかったというわけだ」
ーーレース序盤のセーフティカーがカルロス・サインツにとって不利に働いたでしょうか?
「いや、そうは思わない。レッドブルのペースが大幅に速かったことがこの結果につながっているし、セーフティカーの有無は結果には影響していないと思う。カルロスはソフトを履いていて周りのドライバーたちはミディアムを履いていたから、序盤のセーフティカーは助けになった面はある。走り始めを緩やかにできたし、サーマル(熱)マネジメント面でも助かった。だからセーフティカーによって結果が左右されたわけではなく、単純にレッドブルが速すぎたということだ」
ーーメルセデスAMGのトト・ウォルフはヨーロッパラウンドが終わる前に選手権は決まってしまうだろうと話していました。フェラーリも来季への切り替えも考慮していますか?
「来年のマシンはレギュレーションが今季型と同じだから大きくは変わらないし、今季型マシンの開発は来季型マシンの利益にも繋がる。だから今季型マシンの弱点を理解しそれを改善するというプロセスは来季型マシンにも有益なんだ。まさに今回タイヤデグラデーションが問題となった原因を究明することは、来季型マシンにも繋がることなんだ。だから今季型マシンの開発を止めたりはしない」
ーーシャルル・ルクレールのファステストラップ狙いのピットストップは必要だったでしょうか? レース中にも戦略をドライバーと話し合うような場面も多々見られましたが、ストラテジー部門の再編などは必要ないでしょうか?
「それは全く必要ないと思っている。もちろん常に学び改善していくことは重要だ。しかしこれまでのレースを振り返って見れば、外から見て批判されていることも現実とは違っていて実際にはミスでなかったこともたくさんある。それとは切り離して今日のレースだけを見ても、最後のピットストップは正しい判断だったと思う。F1では勇敢である必要がある。ピットインしてフェルナンド(・アロンソ)の前で戻るチャンスがあるなら、そこをトライするのは正しいことだと思う。非常にギリギリのタイミングであることは分かっていたし、ポジションを失う可能性も分かっていた。しかし仮にポジションを失ってもフレッシュなタイヤでDRSもあればメインストレートで抜き返すことができるはずだったし、正しい判断だった」
ーーしかしピットレーン速度違反で5秒加算ペナルティを科されて5位を失う結果になりました。
「ピットレーンでのスピード違反はレースの中では起き得ることだ。今回の場合は、たった0.1km/h差でピットレーンでのアベレージスピード(入り口の速度測定だけでなく、ピットレーン距離と通過時間で平均速度を算出して監視されている)が制限速度を超えていた。これは我々がセンサーによって測定しているものではなく、我々のマシンの右フロントのスピードセンサーがオーバーヒートのため故障しており、0.1km/hの誤差が正確に測定できていなかったようだという非常に不運な状況だったんだ。だから、それを理由にあの勇敢なピットストップをするべきでなかったと考えるのは間違いだと思う」
ーーモンツァもスパと同様に高速で効率が求められるサーキットだと思いますが、地元レースでも苦戦を強いられることになるのでしょうか?
「モンツァでは問題にはならないと思っている。今回は軽いウイングを持ち込んでいたが使わなかった。日曜の暑いコンディションとタイヤデグラデーションを考えれば、正しい選択とは言えなかったからね。それよりも問題なのは、彼らが軽いダウンフォースレベルで走行していながらセクター2でも速さがあるということで、それはつまり高い空力効率を誇っているということだ。低いCD値(空気抵抗係数)で、ロードラッグ&ハイダウンフォースなマシンだ。モンツァでは今回とは異なるさらにドラッグ量の低いウイングを使用するから今回のようなことは懸念にならないが、それよりも今日のレースで彼らが見せたパフォーマンス自体の方が懸念事項だということになる」
ーーレッドブルは軽量化モノコックを投入するといわれていましたが、クリスチャン・ホーナーは少なくとも今後数戦はその可能性はないと否定しています。バジェットキャップの観点から、このようなことは可能でしょうか?
「彼らが軽量化モノコックを投入するのかどうかは把握していないが、一般論としてどのチームもバジェットキャップにはかなり苦労しているし、彼らが軽量化モノコックを投入できるかどうかと聞かれれば、おそらくそれは難しいだろうと思う。少なくともフェラーリは軽量化モノコック、もしくは現在とは異なる仕様のモノコックを開発し投入することはバジェットキャップの観点から見て不可能だ。もしそれが可能なチームがあれば驚くね。いずれにしてもテクニカルレギュレーションではなくフィナンシャルレギュレーションによって選手権が決まってしまうような状況は好ましくないし、FIAの運用・監視面においてもさらなる改善が必要なルールであることは間違いないと思う」
(text by 米家 峰起 / photo by Ferrari)
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