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【2022 Rd.11 AUT】決勝総括:メルセデスAMGの巧妙な戦略、角田裕毅の善戦【戦略分析②】

【2022 Rd.11 AUT】決勝総括:メルセデスAMGの巧妙な戦略、角田裕毅の善戦【戦略分析②】

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 2022年の第11戦オーストリア決勝の優勝争いに続き、中団グループのレース戦略を分析していこう。

 

 全ドライバーのギャップをグラフ化すると以下のようになる。横軸が周回数、縦軸がギャップで、一番上がトップランナーで、下に行くほどトップとのギャップが大きくなる。

 

 

 ⑨中団グループのレースは、ジョージ・ラッセル(緑色・太線)が最初にピットインすることで口火を切っている。中団トップのラッセルだが、1周目のセルジオ・ペレスとの接触でフロントウイングを痛めてペースが上がらず後続を抑え込んでいる状態。そこに5秒加算ペナルティが科されたため、早めのピットインでこれを消化すると同時にタイヤ交換とノーズ交換を行なった。

 

 ラッセルは実質最後尾まで下がったが、これを見て中団グループの各車が続々とピットイン。ほとんどのマシンがミディアムのデグラデーションが予想よりも大きく、この時点で1ストップではなく2ストップ作戦へのシフトが決定づけられた。

 

 ⑩それに対してルイス・ハミルトン(緑色・細線)だけは延々とタイヤを保たせてステイアウト。⑪誰よりも長い28周目まで引っ張ることで純粋なペースで差のある中団勢をオーバーカットすると同時に、フェラーリ勢と同様にライバルに対してタイヤオフセットを作って優位に立ち、なおかつ1ストップ作戦でも走り切ることができるウインドウまで持って行っている。

 

 その後ハミルトンは後続を寄せ付けることなく、単独3位でレースを終えている。これはラッセルを使った誘導作戦が上手く行った結果でもある。

 

 ⑫一旦は中団グループの最後尾に下がったラッセルだが、40周目のピットしトップでまたしても中団勢の2回目のピットストップの口火を切り、ここでハース勢(白色)と5秒ペナルティ消化のランド・ノリス(オレンジ色・細線)をアンダーカットする。

 

 その後コース上で⑬フェルナンド・アロンソ(水色・太線)と⑭エステバン・オコン(水色・細線)を抜いて4位。予選でのクラッシュでリアウイングは1ステップ重い仕様にせざるを得ず、さらにプチ高地ゆえ通常より僅かにパワーダウンした状態という二重苦を背負っていたが、純粋なペースの良さとデグラデーションの良さで中団グループを全て抜き返すという安定感を遺憾なく見せている。

 

 アロンソはVSCの57周目にすかさずピットに飛び込む好判断を見せたが、ホイールに問題があり良く58周目に再びピットインを余儀なくされ後退。これがなければノリスの後方からフレッシュタイヤで追いかけ、10周ほどタイヤオフセットのある前の3台を抜ければオコンの後方6位でフィニッシュすることができていた。

 

 ハース勢はオコンの後方でダブル入賞を果たしたが、レース序盤にオコンの背後にいたケビン・マグヌッセン(白色・太線)はデグラデーションが大きく、ミック・シューマッハ(白色・細線)が先行。マグヌッセンはトラックリミット違反で5秒加算ペナルティを科されたこともあってミック逆転はならず、同じ5秒加算を科されたノリスにも負けて8位に終わっている。

 

 

マシンに異常を抱えた角田裕毅

周冠宇とのポジション争いを55周にわたって展開

 

 ⑮角田裕毅(紺色・細線)はマシン不調に苦しみながら後方の周冠宇(深紅色・細線)を抑え込む走りに徹している。

 

 ⑯24周目にピットインした周冠宇に対して、角田は26周目まで引っ張ってピットイン。周はハードからハード、角田はハードからミディアムに交換して周冠宇の前をキープしアンダーカットを阻止して見せた。

 

 ⑰しかし角田のペースは振るわず、37周目にオーバーテイクを許した。

 

 ⑱だが周冠宇にはトラックリミット違反による5秒加算ペナルティが科されていたため、46周目にピットインしてこれを消化している間に、同一周にピットインした角田が再び先行した。それでもペースではミディアムタイヤに履き替えた周冠宇に分があり、ハードの角田は太刀打ちできず抜かれて最後はセバスチャン・フェッテル(深緑色・細線)にも抜かれて17台中17位でフィニッシュすることとなった。

 

 しかしマシンが異常を抱えた状態で粘り強くここまで戦ったことは賞賛すべきだろう。

 

 

(text by 米家 峰起 / photo by Pirelli)

 

 

 

 

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