【2022 Rd.9 CAN】決勝総括:アロンソ後退の理由はメルセデスAMG【戦略分析②】
2022年の第9戦カナダGP決勝の優勝争いに続き、中団グループのレース戦略を分析していこう。
全ドライバーのギャップをグラフ化すると以下のようになる。横軸が周回数、縦軸がギャップで、一番上がトップランナーで、下に行くほどトップとのギャップが大きくなる。
①予選2位のフェルナンド・アロンソ(水色・太線)はカルロス・サインツ(赤色・細線)を抑えることはできず、1ストップ作戦を選択して9周目のVSCでステイアウトを選んだ。背後のルイス・ハミルトン(緑色・細線)がここでピットインしたためでもある。
⑥メルセデスAMGは9周目のVSCでハミルトンをピットインさせ2ストップ作戦、ラッセルをステイアウトさせて1ストップ作戦と2台で戦略を分けているが、ハミルトンは中団勢がピットインしなければその中に飲み込まれることを覚悟の上でピットインさせている。マシン性能差と9周のタイヤ差があれば、コース上での追い抜きは充分に可能だという読みもあっての思い切りの良い戦略だった。
⑦19周目にミック・シューマッハがピットインしてVSCが出されるが、アロンソはステイアウト。アロンソと後方のジョージ・ラッセル(緑色・太線)がピットエントリーを通過する際にはまだイエローフラッグのみでVSCは出されていなかった。
そのため首位サインツと3位アロンソはピットインできずステイアウト。しかし4位ラッセルはVSCが出ると見込んでピットイン。ここで入らなければ、エステバン・オコン(水色・細線)ら中団グループに飲み込まれるリスクが高かったからだ。そこを読み切ってピットインさせたメルセデスAMGのファインプレーと言えた。
サインツは翌20周目にVSC下でピットインしたが、VSCは間もなく解除となり完全にメリットを享受することはできなかった。そしてアロンソがピットエントリーに差し掛かったときにはすでにVSCが解除されており、ステイアウトを選択。
しかし、ここでピットインしておけば中団グループに飲み込まれることはなかった。だがアロンソとアルピーヌはメルセデスAMG勢と戦うことにこだわりすぎたためピットインができず。デグラデーションが進んでペースが低下してもなおSC/VSC待ちでズルズルと28周目まで引っ張ってしまい、⑧完全にミディアムタイヤが終わってピットインすると、当初は13秒後方にいたはずのオコンにアンダーカットされることになってしまった。
アロンソの方が9周フレッシュなタイヤを履いていたが、オコンに追い着いてオーバーテイクすることはできず。アロンソはレース終盤にチャンスが巡ってくることを見定めてタイヤマネージメントに徹していたはずだが、⑨49周目のセーフティカーで2台ともにミディアムに履き替えたため、タイヤ差はなくなりそのままの順位でフィニッシュすることとなった。
一方メルセデスAMGはフェルスタッペンがピットインした43周目の翌周にはハミルトンをピットインさせ、さらにその翌周にラッセルもピットイン。フリーストップが可能になるほど後続との間に大きなギャップができていたからこそ余裕を持った戦略運営ができている。
アロンソにとっては19・20周目の判断ミスが大きな痛手となってしまった。メルセデスAMGと戦おうと意識しすぎたことがこの判断ミスを招き、チームメイトの先行を許すことになってしまった。しかしレース終盤のペース差を見れば、決勝でアルピーヌがメルセデスAMGと戦うのはかなり難しく、戦うべき相手を見誤ったことが最大の敗因だったと言えるだろう。
(text by 米家 峰起 / photo by Pirelli)
相変わらずメルセデスのストラテジーは仕事しますね。
今年はファクトリーから持ち込んだパーツをそのまま使うというよりも、現場のメカニックの突貫工事が多い気がします。技術指令が出たときも2対目のフロアステーを頑張って取り付けたにもかかわらず、それがレギュレーションに適用されてなかったのはお粗末な感じでした。
2年前のICEモードのTDが出たときもメルセデスは前から見越して準備してたので、今回のステーもある程度予想して準備してたんでしょう。シルバーストーンに間に合うといいですが。
レッドブル応援している身からしても、メルセデスのメカニックが現場の突貫工事頑張った中であのような批判受けてたのを見ると、少し悲しいですね。それも、ゲームの一部なんでしょうが。