2022

 

 2022年の第9戦カナダGP決勝の優勝争いに続き、中団グループのレース戦略を分析していこう。

 

 全ドライバーのギャップをグラフ化すると以下のようになる。横軸が周回数、縦軸がギャップで、一番上がトップランナーで、下に行くほどトップとのギャップが大きくなる。

 

 

 ⑩最後尾スタートの角田裕毅(紺色・細線)は、ミディアムタイヤでスタートし9周目のVSCでピットイン。ここからハイペースで前の中団グループとのギャップを縮めていたが、19周目にVSCが出て中団勢が各車ともピットインできたため、アンダーカットは成功せず。さらには周囲のマシンより10周古いタイヤで走ることとなり、不利だけを背負うことになってしまった。

 

 また、5周目にピットインするギャンブルに出たピエール・ガスリー(紺色・太線)も、直後にVSCが二度も出たことでピットロスタイムを取り戻せず、角田にオーバーカットされるかたちとなってしまった。

 

 アルファタウリとしては2台ともに本来の実力よりも後方のグリッドからのスタートとなったにも関わらず、2台ともにミディアムスタートで早めのピットストップという同じ戦略を採らせており、2大伝染略を分けなかったのはSC/VSCに左右されることが多いカナダGPとしては大きな失敗だったと言わざるを得ない。

 

 ⑪角田はピットミスのあったマクラーレン勢はアンダーカットすることに成功したものの、ハードタイヤのままステイアウトしたランス・ストロール(深緑色・太線)の後方に周冠宇(深紅色・細線)とともに抑え込まれることになった。

 

 ストロールのペースは遅いがストレート速度で後続を抑え込んだため、前のバルテリ・ボッタス(深紅色・太線)とのギャップは拡大。これに対して1ストップ作戦ですでにタイヤ交換を終えていた周冠宇はストロールのピットストップ待ちでポジションキープの走りに徹するだけで良かった。

 

 しかし角田としてはストロールの後ろでステイアウトし、9周目から最後まで1ストップで走り切るか(ケビン・マグヌッセンとほぼ同様の戦略)、ストロールよりも先にピットインしてアンダーカットするかのどちらかを選ばなければならなかった。

 

 前者はタイヤのデグラデーションを考えればかなりリスキーで、9周目のVSCでピットインしてこの戦略を採ったドライバーは他にいない。49周目のSCでもタイヤ交換をしなかったマグヌッセンのデグラデーションを見ても、土曜の雨の後でグリーンな路面となった日曜においてはかなり無理がある戦略だった。

 

 

 つまり後者を採るべきはずだったが、アルファタウリは後方のアレクサンダー・アルボン(薄水色・太線)との位置関係を気にしてなかなかこの決断に踏み切れず、⑫先にストロールにピットインされてしまった。しかも同一周回に入るという、逆転の可能性がほぼゼロに等しいという意味では最悪の戦略を採ってしまった(ピットガレージ位置もアルファタウリの方が前方にあり、アンセーフリリースを採られやすいだけに不利)。

 

 ステイアウトしても新品タイヤのストロールのペースの方が速く、ストロールをオーバーカットできる可能性はなかったはずだが、もし数周以内にSCかVSCが出れば逆転は可能だ。もしくは最後まで走り切る戦略に賭けるしかない。ストロールよりも先にピットインできなかったのなら、同時ピットインよりも逆転の可能性が僅かでもあるそちらの戦略を採るべきだった。

 

 もし⑫よりも先にピットインしていれば、ストロールをアンダーカットすることはできたが、ケビン・マグヌッセン(白色・太線)とアルボンの後方14位でコースに復帰していた。そしてタイヤエイジ差の大きかったマグヌッセンとアルボンは容易に抜くことができ、それが大きなタイムロス無くできていればストロールをアンダーカットすることができていた。逆に言えば、その自信が持てなかったから、マグヌッセンとアルボンがピットウインドウ内にいる間はピットインに踏み切れなかったとも言える(ストロールが角田とのギャップを見て前で戻れる間にピットインしていたはず)。

 

 角田はマグヌッセンの前で11位かストロールの後ろ12位でコースに復帰。15秒ほど前方の10位セバスチャン・フェッテルと9位ダニエル・リカルドは19周目に交換したハードタイヤがタレ始めており、もし自身の出したセーフティカーがなければ、残り15周で彼らを抜けばポイント獲得が可能だった。

 

 ポイントが獲れるかどうかギリギリのラインにいたレースだったが、ピットインを遅らせたことでそのチャンスを逃した。しかしそれはオーバーテイクができないのではないかというチームの慎重さによるもので、ある意味ではメルセデスAMGとは違いドライバーに対する絶対の信頼が確立されていないせいだったと言えるかもしれない。

 

(text by 米家 峰起 / photo by Pirelli)

 

 

 

 

 

 

 

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