【アプレゲールですいません。】的外れなマクラーレン批判は、取材不足ゆえ
依然としてフェルナンド・アロンソの事故を巡って様々な憶測が流れていますが、あくまでいずれも憶測に過ぎません。セカンドインパクト症候群を避けるために開幕戦を欠場するのも、頭部への衝撃を受けた後の判断としては極めて妥当なものです。
マクラーレンが情報を隠蔽しているというイメージは、基本的に2つの事実から来ているような気がします。事故直後にチームからの明確な情報開示が遅かったこと、そして2月26日にバルセロナで行なわれたロン・デニスの記者会見での態度が高圧的で「くだらない会見だ」という印象を与えてしまったことに原因があったような気がします。現場にいたジャーナリストでマクラーレンの情報隠蔽を疑っている人たちは、そういう人たちだと思います。
それだけでなく、現場外でこうした情報を受けて「マクラーレンは怪しい」「感電ではないか」と二次情報を流している人たちもいます。そういう報道を受けて、なんとなく感電説やマクラーレンの情報隠蔽説が信憑性を持ち始めているというわけです。
アロンソが20年分の記憶を失っていたという報道までありましたが、これはスペインのいち新聞が報じた記事がネット上に拡散されているに過ぎません。もしかすると事故直後は一時的な記憶喪失や記憶の混乱が起きていて医師との間でそういうやりとりがあったのかもしれませんが、にわかには信じがたい話です。そもそも、スペインの新聞はいい加減という評判がありますし、ロン・デニスも再三言っていましたが、スペインではアロンソゆえに極端に報道が過熱しすぎているという面もあります。
『F1LIFE』ではロン・デニスの事故説明会見も全録してお届けしましたが、僕も確かにその場では「何だかなぁ」という印象を受けました。でも改めて会見の内容を聞き返してみると、もし仮に彼らが説明しているのが事実だったとしたら、あの時点ではあれ以上の説明はできなかったというのも事実だと思いました。メディアの側が隠蔽と決めつけて意地悪く同じような質問を繰り返したからこそ、ロン・デニスも感情的な語り方になってしまった面もあったようにも感じられました。
この会見全録をご覧になっていただければ、世間で言われているような「マクラーレンが情報を充分に公開していない」ということや「充分に世間の疑問に答えていない」という批判がこの会見を知らないがゆえの的外れなものであることがお分かり頂けると思います。その上で、この事故とマクラーレンの説明に対してどうお感じになるか、それは皆さん各自で判断して頂ければと思います。
いずれにしても、今はアロンソの回復を祈るのみです。
(text and photo by 米家 峰起)
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