L・ハミルトン「自分が生きたい人生を選ぶ」
長年在籍したメルセデスAMGからフェラーリへと移籍したルイス・ハミルトンですが、その背景にはハミルトン自身の「人生」や「挑戦」に対する考え方がありました。
最近公開された『LinkedIn(リンクドイン)』のインタビューの中で、ハミルトンは非常に機知に富んだ発言をしています。
まず、仕事を選ぶ上で大切なのは、自分が生きたい人生を送ることができるかどうか。
「自分がやるべきかどうかで仕事の善し悪しや成功を量るのではなく、自分自身が充実し生きたい人生を送れるような何かを探すべきだ」
F1以外のファッションや音楽、社会奉仕活動などにも精力的に活動するハミルトンですが、そういった活動をするのもその考えに基づいたことなのだと言います。
「どんなスキルであろうと、新しいことに挑戦するだけで多くを学ぶことができる。長年F1で戦ってくれば、古い習慣に囚われたり自分が快適だと感じるところに留まる方が簡単だ。でも、ALMAVEやDiorとのコラボがそうだったように、僕は新しい挑戦に挑むことが好きだし、それによって心地良くない状況にもなり得るけど、それこそが自分をプッシュして学ぶチャンスになるんだ」
なおかつ、そういった挑戦がF1でのプラスにも繋がっていると言います。
「F1以外のプロジェクトに取り組んでいるときは、ものごとをいつもとは違った視点で見なければならないし、何が成功なのか、そこに辿り着くにはどうすれば良いのか、新たな視点を与えてくれるんだ。マシンに戻った時にも、その新たな視点がさらに自分自身を磨く助けになる。そういうコース外での取り組みがなければ、僕は今のようなドライバーにはなれていなかったと思う」
そしてチーム移籍のような大きな決断も、同じように「自分が生きたい人生か」という基準で判断した結果。
どんな場所でも、長年いれば自分の肌に馴染んだぬるま湯のように感じられ始めるものです。そこに安住して満足してしまうことは「自分が生きたい人生」ではないというのがハミルトンの考え方。
もちろん移籍して新たな環境に飛び込むことにはリスクがありますが、同じ場所に留まり満足してしまうことの方が自分にとっては大きなリスクなのだとハミルトンは語ります。
「未来を予想することなんて誰にもできないのだから、転職だったり僕の場合は移籍だったりというのは一定のリスクを伴うことになる。でも僕は心地良い場所に留まりそこに満足してしまうことにこそ、より大きなリスクがあると考えているんだ。人はそれを本能や直感と呼ぶのかもしれないけど、僕はフェラーリと契約することが正しい選択であり、僕が必要としていた挑戦をもたらしてくれるんだということが分かっていたんだ」
そして、新たな挑戦を始めるときには、それに100%集中し全力を注ぐこと。それができる環境になければ、挑戦はできないと語ります。
「何を優先するかが一番重要だ。何か新しいことを始める前に、本当にそれを追求するだけの意欲と余裕があるかどうか。僕は新しいことに挑戦するときには、それを成功させることに専念できる状況でなければならないと思っている。何事も中途半端にはせず、自分の時間とエネルギーを可能な限りそこに注ぐんだ。だからこそ、自分の価値観や目標に本当に合致したプロジェクトやパートナーを選ぶようにしている」
これはトップドライバーたちにすべからく当てはまることですが、彼らはどんな成功を収めたとしても現状に満足はせず、慢心もせず、自分を成長させ続けようとしています。
7度の世界王座を獲得したハミルトンもまさにその通りで、だからこそこれだけの成功を収めてこられたと言え、それでも飽き足らずにさらなる成功を目指して移籍という新たな挑戦に挑むわけです。
「僕はどんなシーズンも新たなチャプターのように捉えてきた。優勝したりチャンピオンを獲ったりしても、次の年には何も保証されているわけではない。だから、1日1日を全力で努力して、マシンに乗り込んだときに前年と同等どころかそれ以上の走りができるようにするんだ。そのマインドセットで大小問わず常に進歩し続けることが、想像以上の成果を達成させてくれたんだ」
過去の栄光はあくまで過去のものであり、大切なのはより輝かしい未来を作りあげるための「今」。そんな思考で常に努力をし続ける人だけが、成長し続け成功を収めることができるのです。
(text by 米家 峰起 / photo by Ferrari)
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