【2020 Rd.1 AUS】レッドブルRB16 注目ポイント・後編「レッドブルの違法行為を発見?」
2020年開幕戦オーストラリアGPでの『レッドブルRB16』のディテール写真集から、『F1LIFE』の注目ポイントを解説しておきましょう。
バルセロナ合同テストの後半でフロントウイングやポッドフィンをアップデートしたレッドブルでしたが、バージボードのビームウイングもさらに進化していました(バルセロナでは伝え切れていませんでした、すみません)。
最前列から伸びる最上段のビームウイング①が、真ん中で2つに分かれたようなかたちに進化しています。途中までは発表会仕様と同じものの、中程に翼端板のように整流フィン②がつき、マシン外側へ向かって気流を導きつつ、その整流フィンの外側は翼弦長の短いビームウイング③に。その下にも①の下面からL字型に伸びたビームウイング④が加わって2段構成になって後方外側のポッドフィン⑤まで伸びています。
上段のビームウイング③には、中間部分にスリット⑥が加えられており、2枚のビームウイングの間から気流を上に抜くかたちになっています。しかし下から上へと気流を導くというよりも、これはスリットの間を通すことで気流の流速を高めて後方へ向けた推進力を高める効果を狙ったものでしょう。実際に、スリットの前方⑦と後方⑧には段差があり、気流の向き自体は水平のまま後方へと抜けていることが分かります。
ポッドフィンはバルセロナ合同テスト後半に投入されたものがそのまま持ち込まれていましたが、ポッドフィン本体⑨はなぜか周辺のボディとはやや異なる色のフィルム貼りに。急きょ持ち込まれて現場合わせで貼ったものだと思われますが、従来品と何が異なっているのかは確認できていません。中間位置がやや内側に窪み⑩、縦スリット⑪が入っているのはバルセロナ合同テスト後半と同じ。
前方のメルセデスAMG型の複雑なエレメントもバルセロナ合同テストと同じで、計7枚のブラインドのような整流フィン⑫のうち、上の3枚が長く伸びてポッドフィン本体と接続、その下の3枚は前方ポッドフィンにのみ接続、そして一番下⑬はどちらにも接続されず1枚上のフィンにぶら下がったようなかたち。そのステー⑭も外側に向けて整流効果を持たせているところが細やかです。
前方のバージボード本体でマシン外側に向けた整流を行ない、ポッドフィン周辺ではその向きを変えて外側へ逃がさずマシン後方へと導くという二段階の制御を行なっているのがよく分かると思います。マシンの上面だけでなく床面に無数に付いた整流フィンも、全く同じ方向を向いています。
さらに言えば、冒頭写真のフロントサスペンションアームも大いに整流を意識した構成になっていて、バージボードのビームウイングと一体となって後方への気流を制御しています。フロントサスアームの周辺と、その下の空洞から、バージボード、ポッドフィン、サイドポッド下のアンダーカット、そしてフロアからリアエンドへの気流の流れが見えるような構成です。
サイドポッドのエアインテイク⑮は非常にコンパクトなRB16ですが、そのかわりコクピット後方のロールフープから冷却風を取り込んでパワーユニット上方に設置されたラジエターへと冷却装置を分散させてサイドポッドのコンパクト化を優先しているわけです。コクピット脇には、当初は存在していなかったエアインテイク⑯を追加しており(これもバルセロナ合同テスト後半から)、初期仕様では冷却がやや苦しかったものと思われます。バルセロナでは最終日に両側にエアインテイクを設置していましたが、メルボルの木曜日には車体左側のみに設置。右コーナーが大半であるため車体左側の冷却が苦しくなるということなのでしょう。
エアインテイクの下に開いた小さな穴⑰は、フロントタイヤの表面温度センサー。多くのチームがフロントウイングの翼端板などに砲弾型のケースに収めて装着していますが、レッドブルは空力的な影響を嫌ってこちらに設置しています。
マシンがピットに戻ってきた際やグリッドに到着した際などには、メカニックが冷却のためにすかさずブロワー⑱をエアインテイクに差し込みますが、その際にフロントタイヤ温度センサーが隠れて数値が出なくなってしまうことがないように、センサー位置に合せてブロワーのアタッチメントにもしっかりと穴が開けられている⑲のも芸が細かいです。
サイドポッドの下には各種ECU⑳が設置されていますが、そこへと冷却風を送るダクト㉑が細かく張り巡らされていたり、オンボードカメラ用の音声を拾うマイク㉒がここに設置されていたりと、狭い空間を最大限に有効活用しています。
RB16では発表当初からコクピット後方に水平フィン㉓が装着されていますが、水平なのは前端部分だけで、その後方は外側が垂れ下がり㉔、翼断面形状で後方はやや跳ね上げられています㉕。
燃料タンクにアクセスする給油口㉖とエア抜き口㉗は、他チームのマシンに較べると格段にコンパクト。そこに挿入された異物やダストの混入を防ぐためのフィルター㉘もコンパクトです。
特に用もないはずなのにタイヤにはタイヤブランケット㉙がかぶせられており、リアタイヤのブラケットはわざわざ外して広げた状態で車検を待っています。これはもちろんタイヤの温度を保つためではなく(であればわざわざ外す意味がない)、フロアのリアタイヤ前方エリアを隠すためでしょう。
ということは、このエリアには何か新しいアップデートが持ち込まれていたはず。バルセロナ合同テスト後半でもここには変更が加えられていなかったため、開幕戦にぶっつけ本番で持ち込んできたのでしょう。わざわざここまでして隠すくらいですから、他チームにコピーされるのは1日でも遅らせたいような斬新なアイディアなのかもしれません。
ちなみに、車検待ちの際にも(雨などの理由がなければ)マシンにカバーを掛けて隠すことは許されていませんし、厳密に言えばこのタイヤブランケットを本来の用途とは違った目的で使用する手法は規定違反だと言えると思います。
RB16で大きく刷新されたコンポーネントのひとつがリアサスペンションで、アッパーアーム㉚が従来のような下反角の付いたかたちではなく、ギアボックス側から水平に伸び、アップライト側でL字型に曲がってマウントされています。これによってサスペンションジオメトリーとしてはマイナス方向(車重が掛かった状態をゼロとした場合、荷重が抜けてリアが浮く方向)にもストロークさせやすくなり、より柔軟性の高いセットアップが可能になっているはずです。
プルロッド㉛もアッパーアームのアップライト取り付けポイントに限りなく近いところにマウントされていて、自然な入力が可能に。この辺りは空力出身ではなく元ミシュランのビークルダイナミスト出身であるピエール・ヴァシェがテクニカルディレクターを務めているだけあって、メカニカル性能にもしっかりと配慮しているからなのでしょう。
リアウイングそのものはバルセロナ合同テストから変更はありませんが、メインプレーンの下側㉜には無数のフロービズのようなヘアラインが見て取れます。開幕戦にわざわざ中古のパーツを持ち込むとは思えず、バルセロナである程度のマイレージを走らせたパーツを金曜フリー走行で使うとしても再塗装はするはず。
ということは、このヘアラインは狙ってつけたもの? ただのフロービズ跡でもなければ、気流汚れでもないはずで、おそらく意図的に表面をケガいているものと思われます。これによって気流がより表面に粘着して剥離せずにウイング後端へと流れていくのかもしれません。このヘアラインはメインプレーンの後端まで続いています。
細かく見れば見るほど、ものすごく手の込んだことをあらゆるエリアでやっているのがレッドブル。もちろんどんなチームでも最大限の開発努力はしているはずですが、空力的にもメカニカル的にも、あらゆるエリアに特別なアイディアを編みだして具現化しているのがこのチームのすごさを物語っていると思います。
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レッドブルRB16 – 2020 Rd.1 AUSTRALIA
https://1drv.ms/u/s!AiB8FHnTfc5DifphOy-D0bVUPNZ3Lg?e=UcgrB9
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(text by 米家 峰起 / photo by F1TECH)
コメントどうすっかな・・・
言いたいろくでもないワシやから・・・
そやけど、しょうもないこというと、このすごすぎる出しに申し訳ないしなあ・・・。
1個だけ言うと(全部すごいけど)
「ヘアライン」とか普通の人はわからへんやろうし・・・
ガンダムのコンスコン、とか、コンペトウ、とか、とまさに同じ。。。運命がいきなりやってきて。
気付くよねやんすごすぎるし・・・
やるやつらもっとエロすぎるし。。(笑
で、、、、
あーん、ありがとうよねやんっ!
見出しの付け方が棒Gateさんに習った感(w
高画質の写真に感激です。
こりゃ、絶対にタイトル獲ってもらって、TAMIYAさんにビッグスケールのモデル作ってもらわないといけません。
発売されるってなったら、ソッコーで予約しますよワタクシ。
そん時には、よねやんのこの高画質の写真が大いに役に立つという
「おぉ、これがあの写真に写ってるとこだな。なるほど、こんなになっとんのか」
ただ、どのレースの仕様にするのかってのが悩ましいですねぇ。
やっぱ、鈴鹿仕様ですか (^ ^)
先は見えないけど、妄想するのは自由だし、楽しいですからね v(^o^)
タミヤさんがF1のプラモを作らなくなった理由のひとつとして、「マシンディテールの取材が以前のようにできなくなったため」というのがあるんですが、こういう写真を見ていると「そうかなぁ」とも思うんですよね。もちろんチーム側が全てオープンに見せてくれるわけじゃないけど、それは今時無理でしょうから。カスタマーチームはPUを全開で見せる権利はないし、ワークスチームはそんな協力はしてくれないだろうし。
まぁ、一番大きいのはコストの問題だと思いますけどね。タミヤさんはディテールまでしっかり作り込んじゃうから、普通に作ると単価が5000円超えちゃうし、大して売れないと儲からないということですよね。それじゃ大人の趣味になっちゃうから、子供の手に渡るようにするためには仕組みを変える必要もあるし(誰かがドーンとお金を出して、子供には安く手に入るようにするとか)。H社が5000万くらい出してドーンと作って、子供にレッドブル・ホンダのプラモ配ったらずいぶん普及すると思うんですけどね。
チームとの契約交渉がヘタクソだというのもあると思います。契約金に、売上の20%に、なおかつ商品は全て事前チェックで修正させられて。。。となると、確かにイヤになりますよね。そこを「おりゃぁ〜!」って通せるエージェントとか使ったら楽になるんでしょうけど。
ゲロゲロっ!
そっかあ・・・
そうゆうことなんや。。。