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2019 Rd.12 HUNGARY
【UTSU】決勝分析レポート、メルセデスAMG大逆転勝利の理由

【UTSU】決勝分析レポート、メルセデスAMG大逆転勝利の理由

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 『F1LIFE』のインターンシップUTSUこと正木聖がドイツGPで取材したレポートをお届けします。まだまだ至らぬ点も多々ありますが、1人でも多くの方に読んで頂き、叱咤激励の声を頂ければと思います。

 

*  *  *

 

 ハンガリーGP決勝は終盤までマックス・フェルスタッペンがリードする展開であったが、2ストップを敢行したルイス・ハミルトンが67周目の1コーナーでオーバーテイクし、勝利を収めた。1ストップが最速と思われていたレースで、2ストップに変更したメルセデスAMGの戦略を決断した裏側を追求してみよう。

 

 まずは今回のレースの展開から振り返ろう。フェルスタッペンは抜けないハンガロリンクにおいて、トラックポジションを重視していたためか1ストップ作戦を遂行していた。一方ハミルトンは1周目からフェルスタッペンの後方1秒から2秒のところでプレッシャーをかけ続けていた。しかし1回目のピットストップを終えた後も1秒以内まで迫るもフェルスタッペンを抜けない状態から脱することができずにいた。そのためハミルトンは48周目にピットインし、2ストップすることにした。

 

 ピレリの事前の予測では1ストップが最速だとされていたが、メルセデスAMGはハミルトンを48周目に2回目のピットに入れ、フェルスタッペンに再び接近し、67周目でリードを奪うことができた。この戦略の判断についてトト・ウォルフは次のように語った。

 

 「今日はストラテジーチームが素晴らしい働きをしてくれた。今朝から戦略について議論していて、2ストップはとても競争力があると思っていた。今日はその通りに機能したよ。ホッケンハイムから無線上の会話のやり方や裏方で考えている戦略などすべてを学んだ結果、2ストップが候補の一つとして上がったんだ」とレース前から2ストップについて検討されていたことを明かした。

 

 

 またチーム側もこの2ストップ作戦を実行するかどうかは40周目から47周目の間で議論がなされており、時間にしておよそ10分の間での決断であったことを明かしている。もしこれが3周分、つまり4分ほど決断が遅れていたらこの逆転は叶うことはなかっただろう。

 

 金曜日は雨の影響で通常のプログラムをこなすことができず、今年のハンガロリンクにおけるロングランデータが不足していた中で、最良の戦略を最適なタイミングでチーム全体でよく検討されていたことが伺える。ではハミルトンの目にはこの戦略はどのように映っていたのだろうか。

 

 「(2回目のピットストップの前に)チームから『2ストップで行くぞ』と言われたので、もしピットインすれば大きく後ろに下がることになるので、どうしたら抜けるだろうかということを考えていたんだ。でもチームは僕とは違った見方ができているので、全ての信頼を寄せるしかないと思ったよ。だから僕らはピットインすることを決意して、ミディアムで出ることにしたんだ。そして僕は『ああ、このスピードで届くのかな、でも行くしかない』と思ったよ。そして僕がこの先の展開を考えていると、チームは残り9周のところで追いついて、すぐにチャージしてファイナルラップで勝負だと言ってくれた。このおかげで、僕は自分の気持ちにまったく疑いを持つことも無くなって、毎周のベストラップを一貫して記録し続けて、何があってもタイムは落とさずに行くことが出来たんだ。』

 

 ピットインしたことで前方のライバルが遠くなり、選択した戦略に対して不安を訴える無線がハミルトンから飛ばされていた。しかしチームもハミルトンの気力が落ちないように無線上で訴え続けていたとウォルフは明かしている。そして今回のハミルトンはチームにすべての信頼を寄せ、最後までベストラップを連発しトップを奪うために戦った。チーム全体の勝利への姿勢が今回の優勝のポイントの一つと言えるだろう。

 

 今回はレッドブルも万策を尽くした中での戦いだったが、メルセデスAMGがすべての頭脳の結集と、ホッケンハイムからの反省を活かしたことで果たしたことで、ドライバーだけでなくチームとして最後まで最善を尽くし、最良の戦略を検討し、できる限りのサポートをドライバーにしていたことが、今回の優勝に対する大きな要因になっていた。メルセデスAMGの総合力が光るレースではあったが、フェルスタッペンもハミルトンに対してがっぷり四つで対決し、総力戦のレースとなった。今後も同じような戦いが見られるかどうか、後半戦にも今から大きな期待がかかるものとなった。

 

 

(text by Takashi MASAKI / photo by Pirelli)

 

 

  • コメント ( 4 )

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  1. zooropa14

    F1は総合力が大事な世界、ドライバー・車体・天候・戦略が揃った時、危機をチャンスに変えてしまうドラマが生まれて最後に勝利の女神がメルセデスに微笑んだレースでした。レッドブルホンダもよく頑張りましたが、まだまだメルセデスが上手でしたね。

  2. dubliner

    「総合力が大事」なのはその通りなのだけど、事前に「1ストップが最速」と言われていたのに2ストップのハミルトンが勝ったのは、ハードのデグラデーションが予想より大きかったから? それともトラフィックでマックスが詰まったから?

    • UTSU

      そのあたりは今回のUTSU分析に詳細に載せていますが、端的に言えばフェルスタッペンのタレが大きかったので、ハミルトンが2ストップにしても追いつけたのが大きかったと思います。事前の予想と言ってもほとんどロングランデータがない中での予想でしたし、メルセデスは2ストップも有力だったと言っていたことを考えると、タイヤに関しては手探り感が多かったというのも影響していたと思います。

      • dubliner

        ボウルズは「フェルスタッペンのタイヤに”崖”がくるのは分かっていた」と言ってますね。
        どんだけ今年のタイヤを理解しているのかと感嘆しますが。

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