【アブダビGP】2016年11月27日(日)取材日記「ハミの執念がタイトル争いを面白くしたんです」
日曜の朝イチ(といっても午後1時からですが)に行なわれたGP3のレース2で、福住仁嶺くんが3位表彰台を獲得しました。土曜のノブに続き日本人ドライバーが表彰台に上ってくれました。
でも本人は「僕が上手く走れなかったせいで勝てなかった。こんな走りをしているようじゃダメです」と全く喜んでいませんでした。
そしてノブの表彰台には駆けつけたホンダの長谷川さんやモータースポーツ部長の山本さんなどの姿はありませんでした。というのも、松本宜之F1担当取締役を含めたお三方がサーキットにやって来たのはGP3のレースが終わった後。ホンダ陣営は仁嶺くん&GP3はどうでも良いってこと……?(翌週のテストには参加しますし、来年のシートもほぼ決まっているはずですけどね)
一転、F1のスターティンググリッドは大忙しでした。チャンピオン争いの2人にも注目しなきゃいけないし、国歌演奏の後は、ジェンソンやマッさんなど引退レースの人のグリッドでは記念撮影を行なっていたり、ハービー・ブラッシュなどもこれで最後だし、限られた15分ほどの時間はあっという間に過ぎ去ってしまいました。
ジェンソンはお母さんがグリッドに来ていて、コクピットに乗り込む前に抱き合い、チーム全員でクルマの周りを囲んで記念撮影。でもF1のグリッドというのは本当にごくごく限られた人しか入ることが許されていなくて、チームスタッフだってグリッドアクセスのパスがなければNGで、機材を運んでいるメカニックですらパスが見えなければ入口でセキュリティに止められてしまうくらい厳重に管理されている場所なんです。チーム内でもグリッドにアクセスできるパスの数は限られていて、臨時でグリッドにアクセスできる許可証の数もほんの僅か(地元の王族関係者でグリッドに入れろ、入れないで揉めている人もいましたから)。そんな中でお母さんにそのパスを用意したマクラーレンの配慮というのも、かなりのものだったと思います。
一方、メルセデスAMGのグリッドでは、レコノサンスラップからグリッドに就いてマシンを降りると、グリッドの周りを取り囲むカメラマンやテレビカメラたちから逃れるようにニコがフィジオセラピストの腕を掴んでさっさとトイレに走っていったのに対し、ハミはカメラの砲列など気にせずマシンの横でレースエンジニアのピーター・ボニントンと話し合っていました。その様子を見る限り、ニコは相当精神的に張り詰めた状態だったように感じられました。
決勝はああいう緊迫の展開になり、ハミのドライビングを「汚い」「フェアじゃない」とチクチク攻撃する人も少なくありませんでしたが、僕はあそこまでタイトルへの執念を見せたハミルトンはさすがだと思いました。彼が普通に走れば独走して勝ってニコが2位でタイトルを決めてしまうところを、彼があそこまでやったからこそニコのタイトルの価値も上がったと思います。
正直、ここまでニコは直接対決でハミルトンを下したというレースがほとんどありません。シンガポールと日本くらいです。特に終盤戦はハミルトン圧勝のレースが続きましたし、そこに対して勝負すらできない情けないレースが続きました。
はっきり言って、最終戦もそういうしょうもない展開のまま2位でフィニッシュしてタイトルを獲ったら、どっちらけだなと憂慮していました。ていうか、原稿を書くにもストーリーにならないなと困っていました(苦笑)。
ハミルトンの形振り構わない執念がレースを面白くし、そしてタイトル争いを面白くしたわけです。何百億円という予算をつぎ込み、何千人という従業員の元でレースを運営しているメルセデスAMGには文句を言う権利はあっても、外野である我々にはそんな権利はないし、むしろ最後までタイトル争いを面白くしてくれたことに感謝すべきだと思います。
レース後、取材とGP2/GP3のシーズンエンドパーティに駆けずり回り、飲めや歌えやで大騒ぎの会場で日本人ドライバー2人を捕まえてシーズン総括の話を聞き(飲み過ぎでベロッベロに酔っ払っている人も多数いる中で)、Sカメラマンが午前5時半の飛行機に乗るというので1時にはサーキットを後にするという慌ただしい日曜の夜でした。
(text and photo by 米家 峰起)
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