
【決勝】レッドブル L・メキース代表「マックスは勝つための攻めの戦略、裕毅も見た目ほど悪くなかった」【2025 Rd.18 SGP】
【まとめ】
・VERはRUSに勝つための攻めの戦略(ソフトスタート、アンダーカット)
・雨もあり序盤はソフトが有利になると考えたが、路面の乾きが早かった
・結果的にタイヤオフセットを抱えて不利に
・TSUはペース自体は金曜も決勝も良好、予選と1周目だけがポイント取りこぼしの要因
・マシン改善の手応えが掴めた
・フロアだけでなく、マシン全体の理解を深めあらゆる改善をしたため
・この改善が2026年型マシンの開発にも役立つ
【フェルスタッペンと角田裕毅の苦戦】
ーーマックス・フェルスタッペンはダウンシフトに問題を抱えながらもランド・ノリスを抑え切って2位でフィニッシュしました。
「レース中の特定の問題について詳細を明かすことはできないが、今日はレースを通して非常にタフな展開だったと思う。我々はソフトタイヤでスタートしたが、トップ10でソフトを履いていたのは確か我々とイザック(・アジャ)くらい(※フェルナンド・アロンソもソフトを選択)だったと思う。序盤でポジションを上げるチャンスを最大化することが狙いだったが思うようにはいかず、結果的に早い段階でデグラデーションが大きく進んでしまい、マシンの扱いが難しくなった。そこで早めにピットインしハードタイヤに履き替えてプッシュしてギャップを詰めたが、その結果としてレースの大半をライバルに比べて古いタイヤで防戦一方の展開になってしまった。勝つためには攻めの戦略が必要だと判断してこの戦略を選んだが、マックスはランド(・ノリス)から強いプレッシャーの中でも2位でフィニッシュする見事な走りを見せてくれた。いくつかレース中に彼を悩ませた要素はあったが、いずれも深刻なものではなく、比較的軽微な問題だったと見ている」
ーーレコノサンスラップの時点では路面がウエットコンディションでしたが、ソフトタイヤ選択にも影響を及ぼしたでしょうか?
「そうだね、確かにトリッキーなコンディションだった。全ドライバーがインターミディエイトのみの走行で、グリッドに向かう段階では誰もドライタイヤを試すことができなかった。テレビで見ると路面はかなり乾いているように見えたかもしれないが、実際にはかなりトリッキーだった。それでも我々はあの戦略(ソフトタイヤでのスタート)こそがジョージと勝負する唯一の方法だと考えていた。トリッキーなコンディションではあったが、序盤の数周でアドバンテージを得られるかもしれないと考えていたんだ。結果的には予想以上に路面の乾きが早く、ジョージを仕留めきれなかった。そしてその結果、レース全体のタイムに影響が出てしまった。それでもマックスは本当によくやったと思う。序盤のソフトでもその後のハードでも、かなり早い段階から防戦を強いられた中で見事に耐えきっていた」
ーー角田裕毅はバクーで調子を取り戻したものの、今週は苦戦していました。その原因は?
「その通りで、裕毅にとってはあまり良い土曜日ではなかった。個人的には金曜の彼の出来には満足していた。タイムシート上では目立たなかったかもしれないが、各ラップを細かく見れば、しっかりとしたレベルで走れていたと思う。しかし土曜日は良くなくて、何が起こっていたのかを一緒に分析する必要がある。今日のレースでは1周目(のポジションダウン)は確かにショッキングだったが、その後は非常に堅実な走りを見せてくれた。17位から12位まで追い上げ、ペース自体は悪くなかった。結局、土曜の不調が響き、いくつかのポイントを取りこぼしてしまったが、これから彼と一緒に改善に向けて取り組んでいく」
ーーイザック・アジャはパワーユニットにトラブルを抱えていましたが、レッドブル側にも同様の問題が発生する懸念はありますか?
「イザックの件について詳しいことは分からないが、こちらとしては特に懸念はない」
【マシン改善の手応え】
ーー苦戦が予想されたシンガポールGPで表彰台を獲得できたことで、今後に向けて大きな自信が持てたでしょうか?
「我々にとってシンガポールで優勝争いができたというのは大きな意味がある。モンツァやバクーとは全く異なる特性のサーキットで、実際に走ってみるまでは我々の競争力がどの程度あるのか分からなかった。とはいえ金曜からリズムを掴めていて、予選でもポールポジションに非常に近かった。そして決勝でも(ジョージ・)ラッセルからわずか数秒差でフィニッシュすることができた。これは我々が過去2戦でマシンから引き出したパフォーマンスが、単にロードラッグ仕様のコースに限定されたものではないことを示している。今後もこのアプローチを変えるつもりはないしう、1戦ずつ目の前のレースにしっかりと取り組み、レースごとに学びを積み重ねていく。今週末からもいくつか小さな改善の余地を見つけることができたし、それを今後に生かしていくつもりだ。次のオースティンはまた全く違うチャレンジになる。中速コーナーが多く、シンガポールでマクラーレンが速さを見せたターン5やターン9と似た特性を持つコーナーが多くある。メキシコも同様で、また新しいテストの場になるだろう。いずれにしても、これまで通り1戦ずつしっかり前進していくつもりだ」
ーーフェルスタッペンは予選後に、ここ最近の進歩はフロアのアップデートによるものというよりも、クルマの扱い方の理解向上による部分が大きいと語っていました。今年の初めの段階からRB21にはポテンシャルがあったものの、それをうまく引き出せていなかっただけかもしれないとも話していましたが、その見解には同意しますか?
「開幕戦からここまで、ミルトンキーンズの全員が懸命に取り組み、このマシンのポテンシャルを引き出そうと諦めることなく懸命に努力してきたんだ。ここ数週間の進歩は本当に目覚ましいのは確かだし、それはチーム全体、特にファクトリーで作業を続けてきたスタッフ全員の努力の賜だと言うべきだ。そしてマックスの貢献も大きい。彼の繊細な感覚が我々を新しい方向性へと導き、その結果としてパフォーマンスを引き出す道筋を見つけることができた。何か1つ『これが理由』という要素があったわけではない。いくつものアップデートを重ね、マシンの扱い方も色々と試した結果、どんなサーキットで戦えるパッケージが完成してきた。だからシーズン序盤のアップグレードについて振り返ってどうこう言うのはとても難しい。我々は過去ではなく、常に前を見据えているんだ」
ーーここ最近のパフォーマンス向上は、あなたの加入による影響が大きいのでしょうか? モンツァで勝利を収めた際には『自分の影響はゼロだ』と話していましたが、ヘルムート・マルコは『彼は謙虚すぎる、ゼロだなんてナンセンスだ』と述べていました。
「まだゼロだよ、今もゼロだ。モンツァの時にも言ったが、このパフォーマンスの向上はチームのみんながレースごとにクルマの限界を分析し、そのポテンシャルを発揮できていない原因を突き止め、どこに、どんなかたちでパフォーマンスを加えればラップタイムに結びつくのかを探ってきた、その積み重ねによるものなんだ。そしてその努力はとても強い意志を持って続けられてきた。だから今こうして結果が出ているのは本当に良いニュースだよ。チームとしても我々が本当に最高の人材を擁していることの証明でもある。でもここで止まるつもりはないし、また1戦1戦、さらに進歩できる部分がないか探っていくつもりだ」
ーーシーズン後半のこのタイミングまでアップグレードを積極的に投入していることによって、2026年型マシンの開発は犠牲になっていないのでしょうか?
「我々としては他チームの動向を抜きにして、まず我々のプロジェクトにさらなるパフォーマンスの余地があるかどうかを理解することが非常に重要だと考えている。その核心を突き止めることが大切で、というのも来年のマシン開発を評価・構築していく際には、たとえレギュレーションが全く異なるとしても、同じツールや同じ手法を使って取り組むからだ。したがって、今年のマシンで我々のデータの見方や開発手法が正しいかどうかを検証することが不可欠だと思っている。そのアプローチで現在のレベルのパフォーマンスを発揮できているというのは、来季に向けて冬の開発に自信を持てる材料になる。もちろん(現在の評価・開発をすることで)2026年に向けたプロジェクトに対して一定のコストは掛かるが、それでも我々にとっては正しいトレードオフだと感じている。他チームがどうしているかを参考にするつもりはないよ」
(text by 米家 峰起 / photo by Red Bull)
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