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【木曜】暑い週末、ボディカウル冷却設定は「空力とPU性能のバランス」【2025 Rd.11 AUT】

2025 Rd.11 AUSTRIA

 オーストリアGPが行なわれるレッドブルリンクは全開率が高く、パワー感度も高い。しかしハードブレーキングはターン3とターン4のみで、エネルギー回生的には厳しくなる。さらに標高が700mとやや高く、ターボチャージャーに求められる仕事量が増える上に、空気の密度が低いだけに冷却は厳しくなる。そして今週末は連日30度という暑さゆえ、冷却面ではさらに厳しくなる。

 パワーユニットの観点でもそんな厳しいレース週末だ。

 2019年に第4期の初優勝を挙げたのがこのレッドブルリンクだったが、あのレースもまさにパワーユニットのダメージ覚悟で攻めた運用を行ない、掴み獲った勝利だった。

 現在では予選・決勝での燃焼モード変更ができないため当時のような攻めた運用はできないが、それでも予選・決勝にむけた冷却面のセッティングなどは難しい判断を強いられることになる。

 パワー感度が高いサーキットだけに、信頼性だけでなくパワーユニットのパフォーマンスを確保するという意味でも冷却設定が重要になると、ホンダ(HRC)の折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーは語る。

「信頼性の観点からPUの作動温度を一定の温度に収める必要がありますが、気温が高いとそれが段々難しくなってきます。ボディカウル(の排熱ルーバー)を開ければ簡単ですが、開けるとラップタイムを失いますから、そのバランスが難しいですね。涼しければボディカウルを全て閉じてもPUのオペレーション温度はリミット以内に収められますが、暑くなるとそれが厳しくなってきますので、どこまでマージンを削ってどこまで閉じられるか(開ける面積を抑えられるか)というシビアな判断を求められてきますから、今週末は週末を通してチームと協議しながら決めていくのが難しくなると思います」

 ボディカウルの冷却設定を攻めれば、空力面で得られるものがある一方で、パワーユニットとしては信頼性だけでなくパフォーマンスも低下してしまう。そのバランスをどう採るかが重要だという。

「冷却で違ってくるのは水温、油温、それから吸気温度ですね。ターボエンジンなので圧縮した空気を(インタークーラーで)冷却して燃焼室に入れるわけですが、その温度が高くなるとどんどんパフォーマンスを失っていってしまいます。ですので、PU側で失うラップタイムと、空力側で得るラップタイムを比較して、吸気温度が高くなってPU側のパフォーマンスが落ちても、空力側で取り分が大きいのであれば閉じようという話をします。ここの場合はパワー感度が高いですから、ある程度までは(ボディカウルを)閉じていきますが、これ以上やるとパワーによるラップタイム損失が大きいからここでやめてこうという話になると思います。そこを金曜のFP1とFP2で見極めていくことになります」

 なお、前戦カナダGPではリアム・ローソンが冷却系の問題でリタイアを余儀なくされたが、これはチーム側の水冷システムに問題があり、「そのまま走っているとPU側にダメージが及ぶ可能性があるということでチームと相談してリタイアすることを決めた」といい、予選後に投入した5基目のパワーユニットにダメージは及んでいないという。

 2019年の初優勝時には、HRC Sakura(当時はHRD Sakura)のミッションルームにいたという折原エンジニアだが、エンジンブロー覚悟で非常に攻めたモードを事前に作り、決勝でそれを使ったというのは短期集中連載記事でも解説したとおり。

「あの時は(スタートで2位から7位に後退したものの)追い上げていって千載一遇のチャンスだということで、PUもモードを切り替えてかなりダメージを使う側で追い上げていました。ミッションルームでもみんななんとか結果に結びつけたいという思いで見ていて興奮しましたし、ここに来て(ターン6〜7イン側にある)レッドブルのモニュメントを見るとあの時のことを思い出しますね。あの時も同じような暑い日でしたしね」

 今年のレッドブルリンクでもあのドラマの再現なるのか、楽しみにしたい。

 

(text by 米家 峰起 / photo by 小野 智也, Red Bull)

 

 

 

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