
【マシン性能分析】低速コーナーで稼いだメルセデスAMG【2025 Rd.10 CAN】
2025年第10戦カナダGPにおける全10チームの各マシンがどんな特性を持っていたのかを、予選パフォーマンスから分析していこう。
カナダGP予選の各マシンの自己ベストラップの車速データをまとめると、以下のようになる。
コーナーの速度域によって色分けしてあり、低速コーナーは赤色(〜100km/h)、中低速コーナーは黃色(100〜150km/h)、中高速コーナーはオレンジ色(150〜200km/h)、高速コーナーは緑色(200km/h〜)。ジル・ビルヌーブ・サーキットの場合は中高速と高速コーナーは存在しない。
ピンクはDRSオンのストレート最高速(薄ピンクはディプロイメント切れによる車速低下を示す)、紫色はDRSオフのストレート車速、水色が低速コーナーからの脱出トラクションを分析するための数値となっている。
トップ4チームと中団6チームをそれぞれ別グラフとしたのがこちら。
低速コーナーの速度差は見づらいが、各コーナーの速度差やストレートの前半・後半の速度差、各マシンの得手・不得手は車速ではっきりと分かるはずだ。
こちらはセクター1、2、3別にグラフ化したもの。より細かく速度差を見ることができる。
【パフォーマンス分析】低速コーナー優位性のメルセデスAMG
コーナーを速度域別に分け、それぞれの平均値からパフォーマンス比較をグラフ化したのがこちら。
このデータを元に、マシンごとの各速度域パフォーマンスを5段階評価(一部は0.5刻み)で採点すると、以下のようになる。
カナダで最速だったメルセデスAMGは、低速コーナー(ヘアピン2箇所)で最速。中低速は平均的で、ストレートも平均的だが、予選分析で解説した通りこの数値には見えない部分でストレート前半部分の速さもあり、さらに予選ではミディアムタイヤを使ったこともあってトータルでは最速タイムを記録した。
2番手だったレッドブルはストレートで他を圧倒しているものの、コーナリング性能は低速・中低速ともに劣っている。
カナダでは苦戦を強いられたマクラーレンは、コーナリング性能では優位性があり特に中高速のシケインでは速さを見せたものの、ストレートでは遅い。金曜では2種を比較し予選・決勝ではロードラッグ側を選択したものの、それでもストレート競争力は充分ではなかった。
フェラーリは低速コーナーで速さを見せているものの、それ以外の領域が弱い。DRSオフの区間では速いことからもロードラッグ側なのは明らかで、リアフラップが小さくDRS効果が小さいためDRSオンのストレートでは競争力が足りていない。
中団グループのマシン性能分析を見ていくと、やはりトップ4チームに比べると全体的に五角形が小さくなっているが、特にストレートと中高速コーナーの両方で差が付いているのが興味深い。どちらの領域においても上位チームほど突出した部分がないということだ。
そして予選最上位のアストンマーティンは依然として五角形のグラフは非常に小さい。シーズン序盤から苦戦している低速域の弱点はまだ完全に改善できているとは言えず、それゆえにストレート前半も苦戦している(最高速ではライバルと同等まで伸びている)。
それでもミディアムタイヤを使ってフェルナンド・アロンソがなんとかアタックラップをまとめた結果の予選6位であり、これは明らかに実際のマシン性能以上の結果だと言える。
このグラフを見ると各チームに大きな差があるように見えるが、実際には非常に僅差であり、各項目の優劣も実際には非常に小さな中での方向性の違いを示すものであることは留意しておかなければならない。
ザウバーは元々得意としている低速域を生かしつつ、ダウンフォースを削ってストレート重視でタイムを稼いできた。
レーシングブルズとハースはストレート寄りでコーナリングは特に速度域の高い領域で劣っている。
ウイリアムズはそれとは真逆の傾向。
アルピーヌは低速コーナーでは速さを見せたもののストレート前半部分の遅さでタイムを伸ばせていない。
【2024年比較】空力効率の向上
こちらは2025年のポールラップ(ジョージ・ラッセル、緑色)と2024年の最速ラップ(Q2のラッセル、マゼンタ色)を比較したもの。
タイヤは同じC5だが2025年は0.163秒遅くなっており、0.843秒ものタイムアップを果たしている。
車速(上が2025年、下が2024年)を比較すると、ターン1とターン6、ターン8はほぼ同じ。ターン13では遅くなっている。しかしターン3とターン10では大きく速くなっている。
ストレート全体が速くなっていることを踏まえれば、昨年よりもダウンフォースを削った状態でターン13以外は同等かそれ以上の速さを発揮していることになり、それだけ空力効率が向上していることを意味している。
(text by 米家 峰起 / photo by Pirelli)
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