【シーズン前半戦総括③】チーム編:決勝ではメルセデスAMGにも劣るフェラーリ、中団グループの後半躍進・停滞
2022年シーズン前半戦の各チーム、各マシンの実力を分析していこう。
まず全チームの予選・決勝リザルトを集計し、チームとしてのポジション推移(2台のうち上位のドライバーを採用)と平均順位をグラフ化すると以下のようになる。
予選ではフェラーリとレッドブルがトップ2を独占しているが、ウエットの第9戦カナダGPを除けば第13戦ハンガリーGPだけメルセデスAMGがトップに食い込んでいる。これはマックス・フェルスタッペンのパワーユニットトラブルによるところもあるが、それがなかったとしてもメルセデスAMGがフェラーリを上回ってトップ2に食い込んだことに変わりはない。
フェラーリとレッドブルを比較すると、第5戦マイアミGPから第8戦アゼルバイジャンGPではフェラーリが連続ポールを獲得しているため平均順位ではトップに立ったが、それ以外のレースでは五分五分。純粋なパフォーマンスという点ではかなり拮抗していると言える。
メルセデスAMGは13戦中6戦でトップ3から陥落し中団グループに飲み込まれている。しかし第10戦以降はトップ3に定着しており、前述の通り第13戦ハンガリーGPではトップ2に食い込んできている。第9戦カナダGPはフェルナンド・アロンソがウエットコンディションを利してトップ2に飛び込んだため、実際には第8戦アゼルバイジャンGPあたりから中団グループに食われることはなくなっている。マシンの改善が着実に進んでいることを示している。
中団グループはレースによって勢力図の変化が激しい。これはマシン特性が分かれているためサーキット特性によって得手・不得手が変わることと、そもそもかなりの接戦の中であるためコンマ数秒の差がポジションに大きく影響してしまうためだ。
その中でもほとんどのレースでアルピーヌとマクラーレンが中団上位を占めており、それ以外のチームが中団トップに立ったのは第5戦マイアミGP(アルファロメオ)と第8戦アゼルバイジャンGP(アルファタウリ)のみ。それが両チームの平均順位の高さに表われている。
第6戦スペインGPまではアルファロメオがこの2チームに匹敵する速さを見せていたが、第7戦モナコGP以降は低迷。マシン開発の後れが予選パフォーマンスに直結してしまっている。ハースは乱高下が激しく、マシン自体にパフォーマンスがあるにもかかわらずセッティング面や予選運営面などでそれを最大限に発揮しきれていない。
アルファタウリは第5戦マイアミGPでは5位、と第8戦アゼルバイジャンGPでは4位に付けているが、それ以外は6〜8位が定位置。第4戦エミリアロマーニャGPの9位はアタックタイミングのミス、第9戦カナダGPはブレーキトラブル、第13戦ハンガリーGPはタイム抹消と、本来の実力であれば9番手のチームではないものの、中団トップを争う力がないにもかかわらずパフォーマンスを最大限に引き出し切れていないことが多すぎるのも問題だ。
アストンマーティンは中盤戦の市街地サーキットで好走を見せ、第9戦カナダGPでもトラブルがなければ上位に食い込んでいた可能性が高い(同じウエットのFP3は3位)。しかし後述する決勝パフォーマンスに比べて明らかに予選パフォーマンスが低く、それが決勝結果にも響いてしまっている。
ウイリアムズはアストンマーティンとの最下位争いが続き、アストンマーティンのアップデートが進んだ中盤戦からは差を付けられ最下位に定着してしまった。しかしウイリアムズもレッドブル型サイドポッドに移行してパフォーマンスが向上したことで第10戦イギリスGP以降はパフォーマンスの向上が見られる(カナダGPはアストンマーティンのトラブルによりポジションを1つ上げた)。
決勝順位はレッドブルが常にトップ2に留まっており、速さだけでなく安定感も高い。開幕戦も燃料配管系のトラブルがなければ2番手につけていたことになる。
フェラーリは5戦でトップ2から陥落。第6戦スペインGP、第8戦アゼルバイジャンGPは信頼性の問題で下位に沈み、第12戦フランスGPはドライバーミスと信頼性(PU投入ペナルティ)、第13戦ハンガリーGPはタイヤ分析のミスとも言えるがルイス・ハミルトンと同等ペースしかなかったことから純粋なペースでも3番手となっていてもおかしくなかった。
一方でメルセデスAMGは予選以上に決勝では安定して中団グループを上回る速さを見せており、中団グループに食われたのは第4戦エミリアロマーニャGPのランド・ノリスに敗れたのみ。その結果、平均順位としてはフェラーリを上回る結果となっている。
決勝リザルトでもアルピーヌは安定してトップ5を維持し(下位は第4戦エミリアロマーニャGPのみ)、中団トップは5回。特にマシンの空力パッケージ改良が進んで第9戦カナダGP以降は安定してトップ4を維持している。
それに対してマクラーレンは第4戦エミリアロマーニャGPでトップ3チーム以外で唯一となる表彰台を獲得したものの、4〜7位で安定度は今ひとつ。ランド・ノリスは好走を続けているが、ダニエル・リカルドの予選・決勝パフォーマンスともに振るわないことが影響している。
アルファロメオは第⑦戦モナコGP以降は予選パフォーマンスの低下とともに決勝パフォーマンスも低下。タイヤマネージメントの面でもやや苦しさが滲む。フェラーリ製パワーユニットの信頼性や冷却性能不足による予防的リタイアの多さもかなり影響している。
アストンマーティンは予選に比べて決勝で安定したパフォーマンスを発揮しており、特にリバースストラテジーを中心にタイヤマネージメントを武器にした堅実なレースでポジションアップを果たしている。平均順位でも予選では9番手ながら決勝では7番手に浮上。第8戦アゼルバイジャンGP以降は着実に6〜7番手を争う位置に付けている。
逆にアルファタウリは戦力を落とし、後半戦の低迷が目立つ。第4戦エミリアロマーニャGPの後はアップデートが第12戦フランスGPまでなく、その間に空力性能でライバルたちに差を開けられてしまった。しかしフランスGP以降は7番手に挽回している。
本来であれば第8戦アゼルバイジャンGPだけでなく似たようなコース特性のモナコやカナダでも入賞ができたはずだが、チーム全体としてパフォーマンスを発揮しきれていない。
ハースは34点を稼いでポイントランキングでは7位に付けているものの、上位入賞を果たした開幕戦バーレーンGP、第10戦イギリスGP、第11戦オーストリアGP以外のレースでは9〜10番手に沈んでいることが多く、平均順位では9番手に沈んでいる。それだけドライバーのエラーや戦略ミス、パワーユニットのトラブルで多くのポイントを失っており、少なくとも第8戦アゼルバイジャンGPや第9戦カナダGPはPUトラブルがなければ入賞を果たしていたはずだ。
ウイリアムズはマシンアップデートが進んだ第10戦イギリスGP以降は徐々にポジションを上げつつあり、これにアルファタウリが食われてしまっている。
各レースでのチーム順(リザルトではなく、10チーム中での順位)の平均値を見ると、予選では各チームが均等にバラけており下位2チームだけがやや取り残された状態になっている。これは中団グループが拮抗していることに加え、サーキット特性によってレースごとに勢力図が移り変わっているためだ。下位2チームはそこに加わることができていないということになる。
一方で決勝ではレッドブルが頭一つ飛び抜けており、安定性の高いメルセデスAMGが自滅の多いフェラーリを逆転して2位。アルピーヌやマクラーレンもここに迫っている。
アルファロメオは前半と後半の出来・不出来の差が大きく中間的なポジション。残り4チームがかなり後れを取っている。
開幕3戦では出遅れたレッドブルだが、その後のグラフの傾きは大きく、一定。それに対してフェラーリは傾きが緩やかな箇所が多く、取りこぼしの多さを物語っている。
メルセデスAMGは開幕当初から安定しているが、第11戦オーストリアGPあたりからグラフの傾きが大きくなってきており(実際には第10戦イギリスGPもラッセルのリタイアがなければさらにポイントを稼いでいたはずだ)、マシンの改善がはっきりと獲得ポイント数に表われている。
中団グループはトップ3とは大きくポイント差が開いている。それだけレース結果の上位がトップ3チームによって占められてきているということだ。
シーズン序盤に苦しんだマクラーレンだが、第④戦エミリアロマーニャGPの表彰台もあってリード。しかしその後はアルピーヌのグラフの傾きが大きく、レースごとに安定して多くのポイントを稼いできている。
アルファロメオとアルファタウリが後半に停滞しているのに対し、ハースやアストンマーティンがじわじわとポイントを伸ばしている。
全体的に安定のマクラーレン、後半に強いアルピーヌとハース、アストンマーティン、後半は停滞のアルファロメオとアルファタウリ、そしてウイリアムズというシーズン前半戦のトレンドがはっきりと表われている。
(text by 米家 峰起 / photo by Pirelli)
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