
【決勝】戦略分析:ドライバースワップが大成功のウイリアムズは確信犯?【2025 Rd.6 MIA】
2025年の第6戦マイアミGP決勝の中団グループは、ウイリアムズ勢がメルセデスAMGやフェラーリ勢と戦い中団トップの5位・9位でフィニッシュした。
そんなマイアミGP決勝の中団グループの戦略を詳細に分析していこう。
フェラーリのスワップ指示は遅くはなかった
全ドライバーの全ギャップをグラフ化するとこのようになる。横軸が周回数で、縦軸がトップとのギャップで、上に行くほどトップに近い。
⑦5周目に一度はチームメイトの前に出たカルロス・サインツ(水色・点線)だが、14周目にアレクサンダー・アルボン(水色)が先行。アルボンのマシン冷却が必要でそのメッセージが誤って伝わったためとチームは弁明しているが、サインツは10周目以降は右フロントのグリップ低下でペースが低下しており、前のアンドレア・キミ・アントネッリ(緑色・点線)に着いていくことができていない。
⑧事実、先行したアルボンに対してサインツは付いていくことができず。24周目までの10周で約4秒の差が開いている。
⑨これに対してウイリアムズは、アントネッリがピットインした25周目にサインツを先にピットインさせている。この時点でサインツはアントネッリとの戦いではなく後方のシャルル・ルクレール(赤色)との戦いで、先にピットインしてアンダーカットを阻止する戦略を採るしかなくなっている。
⑩ルクレールはVSCまで引っ張ってピットインしたもののサインツの前に出ることはできなかったが、リスタート直後のターン17から翌周のターン1で上手く仕掛けてサインツをパス。さらにサインツはターン1でライン外に追いやられている隙にルイス・ハミルトン(赤色・点線)にも抜かれてしまった。
⑪フェラーリ勢は前のアントネッリを追いかけるべくミディアムタイヤのハミルトンを先行させたが、ペースはそれほど良くはなく、ギャップはじわじわとしか縮められず、結局最後はポジションを戻した。しかし結果的には2台でDRSを与え合ったことでサインツに対して防御ができ、サインツは逆転のチャンスを得られないままレースを終えることになった。そういう意味ではフェラーリの戦略は意図しないかたちで当たったと言える。
ちなみにハミルトンがポジションスワップを提案したのは36周目の終わりで、37周目に一度は「DRSを使っていけ」と指示が出たものの「これは良いチームワークだとは言えないよ、中国GPでは俺が譲っただろう」との反論に38周目にはスワップの指示が出て38周目のターン17でスワップ実行。フレデリック・バスール代表が語るように、確かにスワップ指示の決定まで2周は掛かっていない。
結果的に戦略大正解のウイリアムズ
④一方、アントネッリのピットインに対して背後のアルボンはステイアウトし、翌周ピットイン。アントネッリの約6秒後にサインツがピットインしてきており、ピット作業終了後もこれを待つかたちとなり4.40秒の静止時間を要してしまった。実際にはサインツの前にリリースすることも可能だったはずだが、これがウイリアムズの狙い通りだとすればウイリアムズは非常に上手いタイミングで2台のピットストップを振り分けたことになる。
⑫ピットアウトしたアルボンはアントネッリとのギャップが一気に縮まり、VSCからのリスタート直後にオーバーテイクを果たした。アントネッリはスプリントと同様に決勝でも、予選ペースは良好だったがロングランペースは思わしくなく、アルボンを抜き返すどころかギャップを広げられてしまっている。サインツも⑧でペースを維持してアルボンのDRS圏内に留まっていられれば、アルボンの後ろ6位でフィニッシュできた可能性は充分にあり、その場合はアルボンとサインツにスワップの指示が出てサインツに5位フィニッシュが与えられた可能性が高い。
チームの指示が悪く⑧で順位が入れ替わってしまったのは事実だが、サインツが9位に終わったのはサインツのペース不足のせいであり、チームとしては結果的にこのスワップは大正解だったと言える。それが確信犯だったとしても驚きではない。
(text by 米家 峰起 / photo by Pirelli)
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