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【総集編】最速・最強チームは意外!? 中団最強チームは?【決勝分析】

2024

 2024年シーズンの各チームの決勝パフォーマンスを分析していこう。

 各レースの決勝における各チームの「獲得ポイント」と「順位」(チーム順)をまとめると、以下のようになる。

 ポイント欄の金色は優勝、銀色は2位、銅色は3位。レース名の欄の色は決勝の優勝チームを示している。

 順位グラフを見ると、シーズン序盤戦は「3強」、第8戦モナコGP以降はメルセデスAMGが加わって「4強」の争いになっていることが分かる。

 マクラーレンは8回のポールポジションを獲得し、シーズン中盤以降は最速のマシンだったが、決勝では最速は第13戦〜第18戦のみで、中盤戦は結果が出ず、終盤戦にもやや失速している。

 フェラーリは第9戦カナダGPの予選失策に加えて第10戦スペインGPの開発失敗から3位〜4位に後退。しかし第16戦イタリアGPのアップデート以降は基本的に1位〜2位に浮上している。中盤戦の失速もさることながら、パフォーマンスがあったはずの時期のカナダGPに加えてシンガポールGPの予選ミスによる取りこぼしも痛かった。

 レッドブルは第11戦以降は2位〜4位に留まり、終盤戦に2勝。マシンパフォーマンスでマクラーレンとフェラーリの2強に後れを取る中でも、僅差のレースでは2位もしくは優勝を掴み獲っているのが大きい。

 メルセデスAMGはレッドブルとフェラーリが失速したシーズン中盤戦に3勝を挙げたものの、後半戦に入ってからは後退しラスベガスGPの優勝以外は3位〜4位に沈み続けている。

 

【RBの敗因はシーズン後半戦の開発不足】

 予選分析では終盤戦に「4強」と「中団グループ」の差が縮まったと解説したが、順位を逆転するまでには至らず、順位的には「4強」と「中団グループ」の分断に変化はない。コンディション波乱のあった第9戦カナダGPではアストンマーティン、第21戦サンパウロGPではアルピーヌがトップ4に食い込んだだけだ。

 第9戦カナダGPまではRBが中団トップの5位の位置をアストンマーティンと争っている。第10戦スペインGPの開発失敗から後退しているものの、決勝ではなんとか中団上位争いに踏みとどまっている。

 問題は第15戦オランダGP以降のシーズン後半戦で、ここでマシン開発の方向修正ができなかったことで8位以下に後退。ステーク・キックザウバーの開発停滞がなければ、RBが最下位に落ちていてもおかしくなかった。

 第19戦USGPでフロア対策ができて終盤戦はやや持ち直したものの、チャンスがあったはずの第20戦メキシコシティGPで予選クラッシュから大きく取りこぼしたのも非常に痛かった。決勝の最下位になったのは、大不振かつ2台リタイアの中国GPとこのメキシコシティGPだけだったことを考えれば、角田裕毅のQ2クラッシュがいかに大きな痛手になったかが分かる。

 

【最も安定感のあったハース】

 その他の中団勢について見ていくと、アルピーヌは序盤戦は低迷していたものの軽量化が始まった第5戦中国GPからは徐々にポジションを上げ、第10戦スペインGPと第15戦オランダGP、そして終盤戦では中団トップへ。

 第21戦サンパウロGPのダブル表彰台による33点で最終的にランキング6位を勝ち獲ったが、第16戦〜18戦はライバルの開発により停滞、イギリスGPとハンガリーGPでは予選ミスによる取りこぼしもあり、実はアップダウンもあった。

 ハースは常に中団トップを争う位置におり、特に大型アップデートによりRBを逆転した第10戦スペインGP以降は安定したパフォーマンスを発揮している(第14戦ベルギーGPは雨の予選で低迷)。

 ウイリアムズはアップデートのなかった前半戦はかなり苦戦を強いられていたが、アップデートを投入した第15戦オランダGP以降は一気に中団最上位へ浮上。しかし第19戦USGPでライバルたちがアップデートを投入してきたことで再び最下位まで低迷している。終盤はパーツ不足による旧スペックへの差し戻しも影響した。

 

【後半戦ポイントランキング】

 シーズン前半戦(左)と後半戦(右)の獲得ポイントを比較すると、後半戦のチャンピオンはフェラーリだった。

 前半戦はレッドブルが42点差を付けて他を圧倒していたが、後半戦はフェラーリが最多得点でマクラーレンを7点上回り、レッドブルは4番手でしかなかった。これはもちろん、マックス・フェルスタッペンが160点を獲得したのに対しセルジオ・ペレスが21点しか獲得できなかったことが最大の要因だ。

 後半戦はマクラーレンが実力ほどのポイントを獲得できておらず、マクラーレンとフェラーリは前半戦に21点差がついていたが、中盤戦の停滞がなければフェラーリがコンストラクターズタイトルを獲得していてもおかしくなかったと言える。

 フェラーリとマクラーレンは、優勝争いに加わったことで前半戦よりも後半戦の方が多くポイントを獲得しており、レッドブルから多くのポイントを奪ったかたちになっているが、メルセデスAMGは前半戦も後半戦もそれぞれ1戦平均19点と20.2点でほぼ変わらず。

 中団グループでは前半トップのアストンマーティンが後半戦は急降下し、後半戦だけを見ればアルピーヌが中団トップ。サンパウロGPのダブル表彰台33点がなくてもアストンマーティンと同数を稼いでいる。アストンマーティンはマシン競争力が低下する中で、ランス・ストロールが無得点に終わったことも痛かった。

 ハースも前半戦を上回る31点を獲得。1戦あたりの平均でも1.928点から3.1点へと大きく向上している。

 逆に前半好調だったRBは後半戦はランキング9位と大きく低迷してしまった。

 なお、後半戦10戦ではフェラーリが最多得点だったが、第6戦マイアミGP以降(計19戦)、第10戦スペインGP以降(計15戦)ではいずれもマクラーレンが最多得点で、2位フェラーリは大差を付けられている。やはりシーズン中盤戦の開発停滞が大きな影響を及ぼしたと言える。

 レッドブルはどの期間でもメルセデスAMGに負けておりランキング4位。そういう意味では、序盤5戦の独走でなんとかランキング3位に留まったと言える。表彰台がなかった上に最高位は5位と、苦しいシーズンを物語っている。

 アルピーヌはどの期間でもアストンマーティンを上回って5位。アストンマーティンが総合ランキング5位を維持できたのも序盤戦のリードのおかげだ。

 RBはマイアミGP以降・スペインGP以降はランキング8位。後半戦は9位。後半に行くにつれてどんどん獲得ポイントが少なくなっていく。最高位は7位が3回と、何度か上位入賞のチャンスがあったことを考えるとやや物足りない結果に終わってしまった。ハースがオーストリアとイギリスのチャンスをものにして6位入賞を2回果たしていることを考えても、チーム力の差が感じられる。

 

【入賞回数・表彰台回数】

 チームとしての入賞回数をグラフ化したのがこちら。左は「シーズン全体」で、右は「シーズン後半戦」。

 入賞回数では両ドライバーが全戦入賞しているマクラーレンが48回で圧倒。つまり無得点のレースがなかった(スプリントのみの入賞も含む)。

 4強チームはいずれも取りこぼしの数が少なく、後半戦は3強がほぼ全戦得点。フェラーリはカルロス・サインツのアゼルバイジャンGPのクラッシュのみが無得点レースで、実力的には全て入賞できていたはずだった。

 しかしその中でレッドブルは40回と最も少なく、8回の無得点がランキング3位への後退に繋がった大きな要因となった。マシンパフォーマンスだけでなく、この無得点の回数も大きく響いている。フェルスタッペンはマシントラブルでリタイアの1回のみ(オーストラリアGP)だが、ペレスの自損による7回が痛い(モナコ、カナダ、イギリス、アゼルバイジャン、メキシコシティ、カタール、アブダビ)。もし5位10点×7回なら、それだけでコンストラクターズタイトル獲得も視野に入ったはずだ。

 アストンマーティンは前半で稼いで20回だが、後半戦はストロールが無得点でフェルナンド・アロンソの5回のみ。ハースは全体19回で後半も11回と、入賞回数で言えば中団トップはハースと言っても良かった。

 アルピーヌはダブル表彰台で大量得点を得たとはいえ、14回と決して少なくない入賞回数を果たしている。RBとウイリアムズはともに4回で後半戦の厳しい戦いを表わしているが、ウイリアムズはアゼルバイジャンGPでダブル入賞を果たすなど少ないチャンスをものにした反面、RBはもう少しあったはずのチャンスを自滅で逃している側面も少なくない。

 表彰台の回数は、シーズン全体で見てもフェラーリが22回で最多。ただしフェラーリが5勝に対しマクラーレンは6勝を挙げており、そこでもコンストラクターズタイトルの勝敗を分けることになった。

 後半戦の最多得点はフェラーリで表彰台の回数も11回と最多。しかし勝利数はフェラーリ3勝に対しマクラーレン4勝。ポールポジションがマクラーレン6回に対しフェラーリ2回だったことを考えれば、最速マシンはマクラーレンだが決勝での強さでフェラーリが上回り、コンストラクターズタイトル争いで肉薄したと言える。

 レッドブルはシーズン後半戦は5回しか表彰台を獲得できず。うち2回がフェルスタッペンの優勝で、2位2回(オランダ、シンガポール)、3位1回(USA)となっている。

 メルセデスAMGは優勝こそ4回あったものの表彰台の回数は少なく、通常のパフォーマンスは表彰台に届かないものの、特殊な状況下でチャンスをものにしている傾向がある。

 大混戦の2024年だったが、4強チーム以外で表彰台を獲得できたのはアルピーヌのみ。それも大荒れのサンパウロGPのみ。大混戦である一方で、「4強」と「中団グループ」の分断も明白になったシーズンだった。

(text by 米家 峰起 / photo by Pirelli)

 

 

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