【総集編】激戦レッドブル対マクラーレン、4強と中団グループ大接近の終盤戦!【予選分析】
2024年シーズンの各チームの予選パフォーマンスを分析していこう。
予選ではドライバー別ではなくチーム別でランキングすることで、各チームの純粋なマシンパフォーマンスの序列と差が見える。
各レースの予選における各チームの「順位」(チーム順)、「ラップタイム」、「トップとのタイム差」(%)をまとめると、以下のようになる。
赤文字はQ3、緑文字はQ2、黒文字はQ1。Q3に進出していても、自己ベストがQ2の場合はそちらをピックアップしている。最下段には参考値としてQ1の最速タイムとQ1/Q2/Q3の平均的なタイム差(=トラックエボリューション)を記している。
なお、レース名の欄の色は決勝の優勝チームを示している。
トップとのデルタをグラフ化したものは一番上がトップで、下に行くほど遅く、単純な順位だけでなくチームごとの差が視覚化されている。
【レッドブルの苦戦は後半戦の前半のみ】
これを見ると、序盤戦はレッドブルが上位勢でも0.3〜0.6%ほどの差を付けてリードしていたが、第6戦マイアミGPから縮まり始め、第8戦モナコGP(市街地)と第9戦カナダGP(セミウエット)は特殊条件とはいえ、第10戦スペインGPではマクラーレンがトップへ。
それでも第11戦オーストリアGPや第14戦ベルギーGPではレッドブルが最速であり、マクラーレンに歯が立たなかった第13戦ハンガリーGPでもデルタは決して大きくはなかった。
レッドブルの苦戦が明確なのは後半戦に入った第15戦オランダGPから第18戦シンガポールGPまでの間で、これは中盤戦からレッドブル自身がマシンバランスの問題を抱えていたことに加え、オランダGPでマクラーレンが、イタリアGPでフェラーリが大型アップデートを投入したことが大きい。それでもシンガポールGPでは0.1731%差まで迫ってきている(フェラーリ勢は予選Q3で不発)。
レッドブルも第19戦USGPでフロアの改良によってマシンバランス問題に対策を施し、再びシーズン中盤戦の頃の競争力は取り戻している(赤旗でQ3の最終アタックが行なえず1回目のアタックで決まってしまったが、Q1/Q2ではトップタイムだった)。第23戦カタールGPではポールポジションを獲得している。最終戦アブダビGPは最終アタックが不発だったが、最終コーナーでスライドして失った0.2秒がなければ2番手でデルタも0.1816%だった。
アドバンテージを持っていたのが序盤戦だけだったのも事実だが、実は苦戦をしたのは後半戦序盤の3戦だけで、それ以降は後半戦も着実にマシン改善を果たしてまずまずの競争力を持っていたことが分かる。
【第6戦以降は混戦、後半戦はマクラーレンが最速】
マクラーレンは後半戦だけで6回のポールポジションを獲得した最速マシンだったが、第7戦エミリアロマーニャGP以降は安定して0.3%以内にいることが分かる。
例外はレッドブルだけが驚異的な速さを発揮したオーストリアGP、ウエットのベルギーGP、低温のラスベガスGPという特殊なレースのみだった。
フェラーリも同様に第6戦マイアミGPと第7戦エミリアロマーニャGPのアップデートで差を縮めたものの、第9戦では予選運用ミスでQ2敗退となり、第10戦スペインGP投入のフロアおよびサイドポッドが失敗に終わったことで中盤戦は苦戦を強いられた。
しかし前述の通り第16戦イタリアGPの大型アップデートで一気に改善を畑氏、それ以降は常にトップを争う位置へと浮上した。別記事にて解説するが、特にレースペースの良さは格別だった。
メルセデスAMGもマイアミGPとエミリアロマーニャGPでアップデートを投入したが不発で、第8戦モナコGPで新型フロントウイングをジョージ・ラッセル車のみに先行投入したところからマシンバランス改善が進み、ドライバーが攻めて走ることのできるマシンへと変貌を遂げた。
とはいえまだマシンの美味しい作動ウインドウは狭く、当たれば速いが当たらなければ0.8%ほど後れを取ってしまうという状況は続いていたのが前半戦。第14戦ベルギーGPに投入した新型フロアは効果が不充分で、本格的な改善は第19戦USGPの大型アップデートを待たなければならなかった。USGPでは1セットを失い、続くメキシコシティGPでも1セットを失ったため新型フロアはなかなか実戦使用できなかったが、終盤戦はパフォーマンスを向上させている。
【中団グループ、4強とのギャップは着実に縮小】
中団グループの中では、第9戦カナダGPまではRBがトップの座にいた。第6戦マイアミGP以降は、開発が停滞したアストンマーティンを逆転している。
しかしフロア開発に失敗した第10戦スペインGP以降は1.2〜1.4%ほどの後れを取るようになり、同じタイミングで開発を進めてきたハースやアルピーヌに逆転を許している(アルピーヌはイギリスとハンガリーで予選運用ミスでQ1敗退)。
後半戦の第15戦オランダGPではウイリアムズも大型アップデートを投入して中団上位に追い着いてきており、第18戦シンガポールGP・第19戦USGP以降は中団勢のアップデートも進んで上位チームとのギャップが縮まってきている。これによりアストンマーティンは完全に中団に飲み込まれ、時にはアルピーヌやハースが上位勢を上回る速さを見せ、上位入賞を果たすのが当たり前になった。
ステーク・キックザウバーも第4戦日本GPや第13戦ハンガリーGPでアップデートを投入した直後は躍進を見せ、第22戦ラスベガスGPの新型フロアで中団上位に追い着いたように、中団グループの中でもアップデート投入の成否で勢力図が変化しているが、それと同時に上位4チームと中団グループの差も着実に縮まって大混戦になっていたことが分かる。
その中でRBも懸命に追い着いていってはいたものの、中団のライバルを上回る開発ペースは発揮できず、スペインGPで取った後れを最後まで挽回できないまま終わってしまった。
(text by 米家 峰起 / photo by Pirelli)
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