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REPORT【報道】
【特別インタビュー】ホンダ新井康久、課題は信頼性確立「テストで走らせたPUをオーストラリアに持ち込むわけじゃない」(3/4)

【特別インタビュー】ホンダ新井康久、課題は信頼性確立「テストで走らせたPUをオーストラリアに持ち込むわけじゃない」(3/4)

報道記事

20150301-05

 

ーーここまで約2年間にわたってこの新型パワーユニットを開発してきて、実際にテスト始まってみて改めて難しいと痛感したのはどういうところですか?

「予想していた通りではあったんですが、システムが非常に複雑なので難しいなということですね。ひとつひとつの要素をきちんと作っていても、全部を組み上げるといろんなことが起きてしまうというところに対しては、経験が足りていないぶん我々は非常に苦労しています。予想以上にすごく難しい。それと、以前のKERSと違って駆動モーターの出力が非常に高くて、電気モーターでいろんなことをやるわけですけど、パッケージをものすごく攻めて作っているので、それと相まって熱の問題とかいろんなことが起きているんです。でも、それを克服すれば絶対に良いものになるという自信を持ってやっていますし、そういう意味ではここまで攻め切って作っていて良かったなとも思っています。だからこそ(熟成がまだまだの)現段階でもこのくらいのタイムが出せているんだと思いますし」

 

ーーホモロゲーションの期限はもう迎えていてハードウェアの変更はかなり限定されてしまうわけですが、ここから開幕戦に向けて信頼性確立のためにどのような作業が可能なんですか?

「今回のテストではパワーユニット側でもいろんな部品を組み替えて、登録したパーツの最終チェックをひとつひとつやってきました。それらを(信頼性を確保して)きちんとアッセンブリーにしてオーストラリアに送り出すという作業ですね。性能面ではどのくらいの熟成度までいけるかというのは現時点ではなんとも言えませんが、最大限頑張ります」

 

ーー今回のバルセロナで走ったパワーユニットがそのままメルボルンで走るわけではないんですよね?

「ではないですね。秘密兵器ではないですけど、たとえばどちらの案の方が良いかということを組み替えて試してみたり、またいろいろと秘密のものをいろいろと試していますし、試したものが磨き上げられてメルボルンに行くと思って頂ければいいと思います。

 性能が良くても、やはり信頼性が厳しいものもあるんですよ。そういったものをもう一回全て整理して、これから日本に戻って『これで行きましょう』というのをまとめるということになりますね。マクラーレンと一緒に決めるものもあるし」

 

ーーということは、今週はトラブルがたくさん出たとはいえ収穫も多かった?

「えぇ、すごく実りのあるテストでしたよね。100周超えた日はドライバーからいろんなリクエストが出たり、こちらからもいろんなことを試して“エネマネ(エネルギーマネジメント)”も含めていろんなことをやりましたから、何をやればどうなるかということはおおよそ掴んでしまったので、制御系に関しては心配していないですね。どちらかというと信頼性、クルマに(一体化)したときのハードウェアに近い部分、エンジン本体ではなくて周りのものの(補器類の)組み合わせなども含めてもう少し配慮しなければならない部分があるとか、配慮していたけどそれを試したらOKだったりとかこれはやっぱりダメかということを今週のテストで確認しましたから」

 

ーー実戦仕様として想定して持ってきたものがここで壊れてしまって困った状態になっているというわけではないんですね。

「逆ですね。今までやってきたものに対して、『こっちの方が良いんじゃないの?』というものを試して、『予想通りだね』とか『あまり変わらないね』というのを見たわけです。その上でホモロゲに対して設計をフィックスしました。それをあと10日間でまとめあげられるかですね。データで変えられものもあれば、仕様を見極めるためにいくつかやったものの中から選んでいかなければならないものもあるし。そうやって最後の形をこれから決めることになります」

 

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ーーおそらく世間の人たちは、すでにホモロゲが終わってしまったのでこのパワーユニットのまま開幕戦を迎えると思ってるのではないかと思います。

「そうしたら飛行機のチケットを返します(笑)。キャンセルしなきゃならなくなっちゃいますよ。でも一応チケットは買ってもいいということなので(笑)。今回出たトラブルをきちんと落とし込んでオーストラリアに持って行くというところです」

 

ーーということは、開幕戦ではテストで起きたような状況にはならない?

「そんなことはないです。そう信じていますし、ここまでも(開幕前テストの)T1、T2、T3とい〜っぱいトラブルは出てきたけど、同じトラブルは出ていないんですよ、実は。だからこそ忙しかったんですけどね。同じトラブルなら『はい、こうすれば直る』って直せるんですけど、『また違うところに来たか!』という感じでしたから。皆さんの期待が大きいことは分かっていますけど、苦労は想像よりも大きかったですね。

 我々は許された開発時間に対してスケジュールは結構厳しかったですから。でも信頼性を充分にしてパフォーマンスが出ないんじゃ、レースにならないでしょ? どこかでバランスポイントを見つけなきゃいけないんですけど、頑張ってパフォーマンス側に持っていかないと良いレースはできないと思ってやってきましたから」

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

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