08/02
【F1リアルスコープSP】エンジニアたちの作業環境とは!? 流行のアイランド型ピットガレージ
レース中やセッション中にチーム代表やエンジニアたちがピットウォールでモニターを見詰めつつ無線で指示を送ったりいった姿は格好良く見えるものですが、実は最近ではエンジニアたちは必ずしもピットウォールにいるわけではありません。
ではどこにいるのかというと、ピットガレージの中です。戦略上の相談や瞬時の判断が要求されることもあるレース中はともかく、フリー走行の間はデータのチェックやドライバ−、メカニックたちとのコミュニケーションの方が重要だったりするからです。
そんなエンジニアたちの作業場所をご紹介しましょう。
まず有名なのはマクラーレンですね。ピットガレージのど真ん中、2台のマシンの間に大きなデスクを設置していて、“アイランド型”と呼ばれたりしているようです。アイランドは島、つまり日本のオフィスなどでデスクのかたまりを“シマ”と呼ぶのと同じ感覚ですね。
左右にそれぞれのドライバーの担当レースエンジニアとパフォーマンスエンジニアが並びます。マクラーレンの場合、2台ともにデータを見る今井さんやピルビームらは後方に位置しています。
デスクの上には各個人用の据え置きモニターが設置されていて、その下にはドライバーだけでなくバックヤードにいるいろんなエンジニアたちと会話するためのインターコム装置。そしてデスクの上には各個人のラップトップPCを持っていって接続して使用しています。
一方、同じくアイランド型を採用しているロータスは、もう少し簡素な作り。ただの工具箱の上にモニターとインターコム装置を取り付けただけというシンプルさで、ある意味でチーム状況がハッキリ表われていると言えるでしょう。
小松さんは2つのモニターのうち片方に映像、もう片方にはタイミングモニターと様々なテレメトリーデータを並べて表示しています。それに加えて自分のラップトップPCも使用していますね。
一方、小松さんと向かい合っているマルドナド担当のマーク・スレードは、タイミングモニターとGPS(コース上のどこに誰が走っているかを表示する画面)を主に表示していますね。テレメトリーデータはおそらく自分のコンピュータ上に表示しているのでしょう。これはフリー走行のスタイルなので決勝では違うのかもしれませんが、それぞれに重視するものが違っていて面白いですね。
ちなみに、ガレージの隅にはルノーのエンジニア用の作業スペースもあります。向かい合うように2人のエンジニアが並んでいます。
フェラーリは意外とシンプルというか、あまりデザインされていないかたち。
左右にそれぞれの担当エンジニアが座るのは同じですが、フェラーリの場合はレースエンジニアはピットウォールに常駐しているスタイルです。
後方には上下左右に4つのモニターが観音開き状に広がっていて、3人のエンジニアがここでデータをチェックしています。
アイランドの後方にはシェルの給油機が置かれていて、浜島エンジニアやマティアッチ代表はここにいることが多いです。そのすぐ後ろはVIPゲスト用の観覧エリアです。
最近何かと設備投資に一生懸命なウイリアムズも、しっかりとアイランド型になっています。
こちらは上下にモニターが2枚ずつと、その間にインターコム装置。向かって右側の中央に立っている女性はエンジニアではなく、広報部門のソフィです。
上下のモニターにはそれぞれ少し角度が付いていて、立ったままでも見やすそうです。ウイリアムズは自分のラップトップPCを持ち運ぶのではなく、コンピュータもこのアイランドに埋め込まれているようですね。デスクの上にはキーボードとマウスが見えます。
トロロッソも実は早くからアイランド型を採り入れていました。デザインもこなれていて美しいですね。
構成は一般的なもので、モニターが3台とインターコム装置が2台、そこにラップトップPCを3台持ち込んで設置というかたち。
やはりいずれも上のモニターは映像やタイミング、GPSなどの表示に使っていて、ロガーデータは自分のコンピュータの画面上で確認しています。
フォースインディアは今年のスペインGPからアイランド型を少しだけ採り入れて、タイヤエンジニアの松崎さんらが作業するスペースを中央に設置してきました。松崎さんも2台両方をチェックするのに便利だとご満悦です。
しかし各マシン担当エンジニアたちはそれぞれ左右の壁面に設置されたスペースを引き続き利用しています。
ザウバーも中央にアイランド型の作業台を置いてはあるものの、壁面の作業スペースも継続利用。これらのチームはセミアイランド型とでも呼べば良いんでしょうか。そういえば以前、小林可夢偉もこの中央部分でフランチェスコ・ネンチとよく話し合っていましたね。そこにセルジオ・ペレスやエステバン・グティエレスが加わってみんなで話し合い、なんていう場面も時々ありました。
ところでこのアイランド型、ものすごく流行っているように思えますが、実はトップ2チームは採用していなかったりします。そもそもがガレージ内で空いたスペースの有効活用ということで生み出されたアイランド型デスクですが、レッドブルやメルセデスAMGはここに巨大な給油機を設置しているので(トップチームは給油だけでなく燃料タンクから抜き出すのもホースに圧力をかけて高速で作業できる装置を使用しているので大がかりな装置になるのです)、有効活用する必要性があまりなかったんですね。
レッドブルは今年からガレージのレイアウトデザインを一新しましたが、エンジニアの作業エリアは相変わらずガレージの壁面に。ただし、かなりカッチリとデザインされていて、巨大なモニターが2枚(うち中央の1枚は6分割に)と、一番奥のパフォーマンスエンジニアの前にはコンピュータ用のモニターが4枚。そして欠くエンジニアが個人のラップトップPCを持ち込み、デスクの下にはインターコム装置が埋め込まれているといったぐあい。
メルセデスAMGも左右の壁面にエンジニアの作業エリアを設けていて、モニターが計6枚と、ラップトップPCを置くためのデスクが用意されています。
マルシアもこんな感じ。こちらは中段に小さなモニターが2つ並んでいます。
ケータハムはレースエンジニアはピットウォールで作業して、パフォーマンスエンジニアとルノーのエンジニアの作業エリアが壁面のところに1人ずつ向かい合うサイズで用意されているのみ。しかしデスクの上にはモニターとインターコム装置が埋め込まれています。
といったように、各チームのエンジニアたちがどのような環境で仕事をしているのか、お楽しみ頂けたでしょうか。フリー走行の中継でも彼らがこんなところから無線交信をしているとか、日本人エンジニアたちがこんなふうにチームの中枢で仕事をしているというのを知れば、よりリアルにイメージしやすくなりF1がより楽しめるのではないでしょうか。
(text and photo by 米家 峰起)
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