REGULAR【連載】

20170320-01

 

 今回のマクホン騒動は、メディアのあり方というものを見詰め直す良い機会になったと思っています。

 

 僕のことを叩く人もいれば賛成してくれる人もいますが、結果的にみんながそれぞれ今のF1を取り巻くメディアの抱える問題点みたいなものに目を向けるきっかけになったのなら、良かったんじゃないかと思います。

 

 良い機会なので、改めて日本のF1ネット情報にまつわる状況をまとめてみたいと思います。

 

 日本のインターネット上のF1関連メディアは、以下の4種類に大別できます。

 

(1)独自に取材した記事を掲載しているもの

 実はネット上ではこうしたウェブサイトはありません。海外でも実はAutosport.comMotorsport.com』、『Espn.comくらいです。その他では『SKY SPORTS』『BBC』などのテレビ局もある程度は独自の記事を掲載していますが、分量としては本格的なニュースサイトには及びません。

 

 日本ではAUTOSPORT WEB』『F1速報WEB』『トーチュウF1EXPRESSが日本人を始めとした現地取材のジャーナリストに依頼した独自のコンテンツを提供しています。

 

 もしかすると、日本で独自取材コンテンツを提供しているのはこれだけかもしれません(見落としがあったらごめんなさい!)。

 

 あ、もちろんこのF1LIFEは全て独自取材制作コンテンツですのでご安心を(笑)。

 

(2)提携ウェブサイトの記事を和訳して掲載しているもの

 (1)で挙げた『AUTOSPORT WEB』『F1速報WEB』も、一般ニュース記事などは英『Autosport.com』と独占契約を結んで和訳版を掲載しています。

 

 世界各国版ができている『Motorsport.com』『Espn』の日本語版もそう。基本は英語版を和訳したコンテンツで構成されています。

 

 こうしたウェブサイトは、運営者が直接取材しているわけではないしF1の現場に関わっているわけではありませんが、現地取材者が執筆した記事を掲載しているという点で信頼できるウェブサイトだと言えます。少なくとも、そこにはそれぞれの「視点」や「意見」があります。

 

(3)GMMの配信記事を和訳して掲載しているもの

 世界的に多いのが、このGMM記事で構成しているウェブサイトです。海外サイトを見ていると、あちこちで同じような記事ばかり……というようなことがありますが、実はあれは全てこのGMMという組織が配信した英語記事をコピペして構成しているだけなのです。

 

 日本ではTOP NEWSなどがこれに当たります。

 

 GMMというのはオーストラリアの組織で、世界中のメディアが報じている記事を再編集して、「XXXの『XXX』がこう報じている」とか「XXXが『XXX』にこうコメントした」という記事を作り、それを世界各国のウェブサイトに毎日数本ずつ配信しています。

 

 これはいわば「報道の報道」で、テレビのバラエティ情報番組で新聞の紙面を紹介してお茶を濁しているのと同じ。取材した生の情報が1次情報、それを報じた記事が2次情報なら、GMMの制作した記事は3次情報に過ぎません。

 

 それよりも大きな問題は、GMMの人間は自分で取材をしておらず、2次情報が正確なモノかどうかの判断基準も持たないまま加工して、責任の所在も不明なまま流してしまうということです。特に最近は結論ありきの記事に仕立てるための意図的な記事引用も目立ちます。

 

 このGMMの配信を受けて運営しているウェブサイトも、当然直接F1に関わっている人間はいませんから、これが事実かどうかの確認もせずコピペまたは翻訳して記事を配信します。これを“メディア”と呼んでいいものなのかどうか、かなり微妙な線ではないかと思います。

 

(4)海外サイトの記事を無断で和訳して掲載しているもの

 最後に挙げるのが、何でもかんでも無許可で和訳して掲載するウェブサイト。有名な『F1-Gate』もこれです。

 

 和訳してしまえばコピー元がどの記事なのか100%確かなことは分からないから立証できないという、限りなく黒に近いグレーゾーンで運営されています。写真をそのままコピーしていれば、それは明らかな黒です。例えるならば、中国や韓国のコピーブランド品と同じです。

 

 問題は、これも事実かどうかの確認もせず垂れ流されてしまうということです。ネットサーフィンをして新しい記事を見付けて翻訳するだけですから、時間も労力も最小限で、原稿料も写真代もかかりません。

 

 もちろん、誰が運営しているのかも不明ですから、記事に間違いがあろうと責任を取る必要もありません。

 

 無料でしかも速く様々な記事が楽しめるのは、ユーザーにとっては良いことかもしれません。しかし、これは中国のパチモノと同じく違法なものです。

 

 『F1-Gate』を“メディア”だと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、あれは”ブログ”です。

 

 インターネットで誰でも発信できる時代だと持て囃されていますが、自分たちが配信する内容に責任を持てるかどうか、それがメディアとしての重要なポイントだと僕は思っています。

 

 その点、F1-Gateのような彼らは自分たちが発信したものに責任を持ちませんから、メディアと呼ぶべきではないと思うのです。それを理解した上でブログだと思って読んで楽しむのは自由ですが……。

 

 それからこれはどのウェブサイトにも言えることですが、ほぼ全てGoogleアドセンスなどの広告収入で運営しているため、PV数、クリック数を稼いだもの勝ちです。そのために、記事の内容よりもセンセーショナルな見出しを付けてクリックさせるわけです。

 

 ものすご〜く長くなってしまいましたが、それだけ今F1報道を巡る状況というのはややこしいというかなんとも言えない問題を抱えているということなんです。それはF1に限ったことではなくて、野球やサッカーなどでも同じことが起きているそうで、ネットの情報を見てあたかも自分が見てきたかのように記事を書く“エア取材”と呼ばれる行為も横行しているとか。まぁ、F1界でもないこともないような……。

 

 こういうことをツラツラ語っていると、自分の利益とか保身のことだけを考えているように思われるかもしれませんが、例えばこの状況がどんどん進んでいくと(2)〜(4)で述べたようなものがどんどん増えていって、(1)のようなものはなくなり、現場へ取材に行く日本人も減るでしょう。おそらく日本人だけではなく、世界各国のメディアも減って、英国のほんの一握りのメディアだけが取材して、それを全世界配信するというかたちになるでしょう。実際、イギリスやイタリア、スペインなどでさえ現地に自社の特派員を送らなくなってきているメディアも増えてきています。フリーで活動しているあのルイス・バスコンセロスですら、「これ以上仕事が増えなかったら今年いっぱいでもう辞めようかと思っている」と言うくらいですから。

 

 そうなれば、GMMのようなやり方もできなくなっていき、(3)や(4)のようなメディアも減っていくでしょう。

 

 今回のマクホン騒動で見たように、(2)のような英国基準のメディアだけで良いのか?というと、それは違うんではないでしょうか。ファンが本当に見たい、知りたいことは、それだけでは足りないのではないでしょうか?

 

 つまり、今のような状況が看過されて放置され悪化していくと、最終的に損をするのは英国以外のF1ファンだと思います。僕が言いたいのは、そういうことなんです。

 

 「なに必死になってんの?」と思われるかもしれませんが、冗談じゃなく本当にマジメに必死にならなきゃいけないくらいの危機に直面し始めていると思いますよ。

 

(text by 米家 峰起 / photo by Red Bull)

 

 

 

 

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