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【F1リアルスコープ】現場のF1専用無線システムに注目!

【F1リアルスコープ】現場のF1専用無線システムに注目!

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 今週末のUSGPはケンウッドがマクラーレンに無線を供給して400戦目ということで、丸の内のJVCケンウッドショールームにも無線システムが展示されていましたが、【F1リアルスコープ】では現場でどのように使われているのかをお届けしていきましょう。

 

 まずこちらが無線システムの本体。無線と言えばどうしてもヘッドセットやトランシーバーがフォーカスされがちですが、本当のシステムはこちらなのです。ピットウォールに置かれたラックの中に収められています。

 

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 ケンウッドは今季から新型のシステムを導入して、主に欧米でビジネス用途に使用されていたNEXEDGEという業務機をF1用にカスタマイズしたものを使っています。なので、システム本体もこんなに小型に。今までは1Uラックサイズ(19インチ=約60cm)でしたが、新型では横に2つ並べて入れてもまだ余裕があります。

 

 6台のシステムが設置されていて、これはトラブル時用のバックアップも含めたもの。チーム内で3系統を使用していて、STR(ストラテジ−)、STR2、(バトン)、JB2、KM1(マグヌッセン)、KM2となっています。

 

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 ケンウッドから派遣されるスタッフが常駐してシステムの管理にあたっています。今年はこちらの松田礼央さんがほぼ全戦をカバー。ピット上に上げるアンテナの設置作業まで、彼がハーネス(安全ベルト)を付けてやってます!

 

 ヘルメットに内蔵されるマイクの調整もケンウッドの管轄。最高の音質での更新を実現するためには、ミリ単位の正確さが必要だそうです。ドライバー用のトランシーバーはコクピット内に収められていて、こちらも今年はかなり小型化したそうです。ドライバーはそこから出ているジャックにイヤフォンのコネクターを差し込むわけです。

 

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 こちらがよく見かけるヘッドセットとトランシーバー。丸の内ショールームに展示されていた業務用NEXEDGEとは微妙に違っています。シンプル化して軽量化しているんです。

 

 ヘッドセットは驚くほど軽く、ノイズキャンセリング機能はついていないのにまるでそうなのではないかと思うほどの静粛性。チームからの要請に応じて静粛性をさらに向上させたのに、今年はエンジン音が小さくなったからそんなに必要なかった、というのが某ケンウッド開発者の声ですが(苦笑)。

 

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 チームスタッフがピットウォールのコンソール上に設置されているこちらの装置を押して交信をしている場面を目にすることがあるかと思いますが、実はこれは無線ではなくてインターコム。テレメトリーデータを見ているエンジニアや戦略を考えているストラテジストなど、チーム内部だけで通話するための有線回線です。ここにFIAレースディレクターのチャーリー・ホワイティングへの回線も割り当てられています。ボタンの内容はスタッフによって異なり、チャーリーへの交信はたいていチームマネージャーが担当しています。

 

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 こちらはメルセデスAMGが使用している無線システム。リーデル社が運営を担当しています。マクラーレンに対するケンウッドのような位置づけではなく、リーデル社は複数のチームの無線を担当しています。

 

 無線と言えば一方向にしか話すことができず、交互に喋るというのが常識です。「こちらXXX、〜〜〜、どうぞ!」と最後に交信終了を伝える言葉を付けますよね。

 

 ですが、実は最近は双方向同時に通話することが可能になっています。

 

 従来はアナログ無線電波を使用していたので一方向にしか通話することができなかったのですが、去年あたりから無線電波ではなくWIFI強化版のWI-MAXを使って通信を行なう装置が導入され始め、これは我々が普通にLAN回線でインターネットのデータをやりとりのと同じように音声データとしてやりとりができますから、要するにSKYPEのようなネット電話として双方向の通話が可能だというわけです。

 

 WI-MAXの電波を使っているチームは、無線通話だけでなくテレメトリーのデータも送受信しています。

 

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 ちなみに、ケータハムのような下位チームではケンウッドのような専用品ではなく、モトローラ社などの市販の装置を使っていたりします。上のケンウッドの装置と比べると、かなり大柄なのが分かると思いますし、実際に持ってみると意外なほどに重たいものです。

 

 各マシン担当のスタッフはそのチーム用の無線トランシーバーだけを身に着けていますが、両方のマシンチームを見る立場の人は2つ、そして戦略用の無線システムも送受信する上級職の人ともなれば3つもトランシーバーを着けているんです。だからこそ、軽量なシステムでないとツラいんです(苦笑)。

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

 

 

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