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2018 Rd.1 AUSTRALIA
【Rd.1 AUS】アルバートパークのツルツル路面、コンサバタイヤにせざるを得なかった理由

【Rd.1 AUS】アルバートパークのツルツル路面、コンサバタイヤにせざるを得なかった理由

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 オーストラリアGPの舞台アルバートパーク・サーキットは、普段はその名の通り公園として一般に開放されている場所であり、東京で言うところの新宿御苑でレースをするようなものです。

 

 サーキットとして使用されるのは公園の湖の周りを周回する周遊路で、その周囲にコンクリートウォールを並べてこの週末だけはサーキットへと姿を変えます。ターン4〜5のように道路ですらなく駐車場の一部を突っ切るような箇所さえもあります。

 

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 最近では市街地サーキットであってもサーキット舗装に近いかなり表面がザラついたμ(摩擦係数)の高い舗装を施している場所も少なくありませんが、アルバートパークの場合は完全に一般のアスファルト舗装です(上写真)。

 

 最後の舗装からかなり年月が経過しているようで、表面は摩耗が進んで非常にツルツルしており、アスファルトの構造材であるひとつひとつの石が小さいのも特徴のひとつ。それゆえにμは低く滑りやすい特徴があります。

 

 タイヤを扱うエンジニアは、「マクロラフネス(粗さ)」と「ミクロラフネス(粗さ)」という2つの観点でアスファルト表面のμを扱います。「マクロラフネス」とはこの写真のように路面全体を見た時のタイヤに対する粗さであり、簡単に言えば、石と石の隙間が生み出すザラザラ度合いのこと。多くの場合、「路面の粗さ」という場合はこちらを指しています。

 

 しかし実際には写真の一つ一つの石の表面の粗さもμのレベルを左右する要素であり、これを「マイクロラフネス」といい、タイヤメーカーやタイヤエンジニアが路面の粗さを測定する際にはこれら両方の粗さを測定してタイヤマネージメントやタイヤ開発に役立てています。

 

 サーキット舗装の場合、石と石の間には瀝青が埋め込まれ、見た目上の表面(マクロラフネス)は平坦に押しつぶされたようなかたちになっています。しかし石と瀝青のマイクロラフネスは高く、これがタイヤに強い負荷を与え、高いグリップレベルを生み出しているのです。

 

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 モナコの路面がこちら。モナコの場合は完全に公道がサーキットとして使用されますが、毎年その一部が再舗装され(写真で黒く見える部分)、新しい舗装はサーキット舗装のようにマイクロラフネスが高いアスファルトになっています。ただしサーキット舗装はその性能を維持するためにはメンテナンスに手間が掛かるため公道に使用されるのはかなり稀ですし、メンテナンスをきちんと行なっていなければ、1年後にはサーキット舗装としての効果は失われてしまいます。

 

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 こちらはハンガロリンクのアスファルト。完全なサーキット舗装ですが、石と石の間の瀝青はかなり摩耗して失われ、マクロラフネスも上がっています。ここに埃やゴミが溜まるとサーキット舗装としては意味を成さなくなってしまうため、メンテナンスが重要になります。

 

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 こちらは半公道のスパ・フランコルシャン(のオールージュ付近)。石の粒が大きく、表面付近の瀝青はかなり摩耗して少なめ。こちらもマクロラフネスもマイクロラフネスも高めで高いグリップを生み出すような路面になっています。

 

 こうしたアスファルト表面の違いを見ると、ストレート中心で比較的ハイスピードのコースレイアウトにかかわらず、アルバートパークにウルトラソフト、スーパーソフト、ソフトの3コンパウンドが持ち込まれた理由がお分かり頂けるのではないでしょうか。実際にはこれでもコンサバティブ過ぎてウルトラソフトが長く保って1ストップ作戦になってしまったため、アグレッシブに行くならばモナコやカナダ同様にハイパーソフトを投入したいところだったのでしょうが、オーストラリアGPのアロケーションはバルセロナでの2018年型マシンでの実走前に決めなければならなかったため(船便で送るため15週間前に決定しなければならない)、ピレリとしてもコンサバティブに行かざるを得なかったのです。

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

 

  • コメント ( 1 )

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  1. 1990

    大変勉強になりました。

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