2017 Rd.6 MONACO

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 2017年第6戦モナコGPは、ポールポジションのキミ・ライコネンがレース前半をリードしたものの、後からピットインしたセバスチャン・フェッテルに“オーバーカット”されて逆転優勝を許してしまった。フェラーリのチームオーダーではないかとの見方もあるが、データ上はどう見えるのか?

 

 フェラーリと同じようにピットストップでオーバーカットが発生したレッドブル勢、3位表彰台を逃したバルテリ・ボッタスとQ2敗退で7位入賞が精一杯だったメルセデスAMG、そして大接戦の中団グループ各チームとマクラーレン・ホンダの実力は?

 

 全ドライバーの全ラップタイムと、全ドライバーのギャップ分布を記したヒストリーチャートで読み解いていく。(本文3941文字)

 

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 こちらが全ドライバーの全ラップタイムで、下地の色は紫色がウルトラソフト、赤色がスーパーソフトタイヤを表わしている。タイムの赤字はピットストップ、青字は自己ベストタイムを表わす。参考記録として、2016年優勝者のルイス・ハミルトンのレース全ラップタイムも併記した。

 

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 こちらはピレリによる各車のタイヤ戦略表。

 

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 グラフ①:上記の全ドライバーの全ラップタイム推移をグラフ化したのがこちら。縦軸がラップタイム、横軸がラップ数で、グラフの上に行けばいくほど速いタイムで走っていることを表わす。各車のペースの差や、デグラデーションの度合いをグラフィカルに分析することができる。

 

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 グラフ②:各ドライバーのポジションとトップからのタイム差をグラフ化したのがこちら。縦軸がトップとのギャップで、横軸がラップ数。下にいけばいくほどトップとの差が広がっていることを表わす(周回遅れは省略)。レース中の各車の位置関係をグラフィカルに分析することができる。

 

 

まずライコネンで“優勝”を押さえにいったフェラーリ

フェッテルは隠し持った実力でオーバーカットを成功させ逆転勝利

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 グラフ①を見ると、フェッテル(赤色・線)はとライコネン(赤色・点線)は20周目過ぎからペースが大きく低下しているが、これは周回遅れが出て来たため。同じように3位ボッタス(緑色・点線)以下も数周遅れでペースが低下している。

 

 この後、ライコネンはタイヤのタレのためペースが伸び悩んだのに対し、フェッテルは最速ペースでプッシュして走行。グラフ②を見れば、フレッシュなタイヤを履いているはずのライコネンとのギャップを広げてさえいることが分かる。ダニエル・リカルド(紺色・線)も同様の推移を見せており、この怒濤の攻めがオーバーカットを成功させた最大の要因となっている。

 

 加えていうならば、フェッテルは予選でミスを犯して本来の速さを発揮できなかったこと、そしてライコネンに引っかかったかたちになった第1スティントでは2秒差を保ってタイヤを労りつつ、パワーユニットもセーブモードで走っていたのを一気にパワー優先モードに切り替えて、ここで初めて本気の走りをしてきたのだ。

 

 フェラーリはオーバーカットが予想外だったとしたが、ライコネンのピットインは対レッドブル&ボッタスで彼らの前のポジションを確実にキープするためのもの。ここで少なくとも優勝を奪われないことを確定させた上で、フェッテルにステイアウトのギャンブルを敢行させ、それが成功したというわけだ。ただし、ギャンブルとはいってもフェラーリは木曜フリー走行でスーパーソフトをトライしたわずか3チームの中のひとつであり、スーパーソフトの傾向は熟知していたはずで、フェッテルの真の実力も含めてある程度のオーバーカット成功の算段はあったものと見られる。

 

 40周目から59周目までの第2スティントのペース&ギャップ推移を見ても明らかなように、フェッテルは純粋な速さではライコネンを凌駕していた。逆転優勝はある意味で当然のことだったのだ。

 

 

フェラーリ同様オーバーカット成功のレッドブル

実は速かったハミルトンもオーバーカットで浮上

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 フェラーリの2台に起きたことが、レッドブルの2台にも全く同じように起きた。ただし、こちらの場合はマックス・フェルスタッペン(紺色・点線)がボッタスとの戦いで実力を発揮できなかったことも要因となっている。

 

 ボッタスをアンダーカットするために先にピットインをしたフェルスタッペンは、翌周ボッタスにカバーされて前を塞がれた。ウルトラソフトのデグラデーションが小さいため、新品タイヤの一撃の威力は大きくなく、ましてや新品とはいえどもウルトラソフトより0.7秒も遅いスーパーソフトでは中古ウルトラソフトにさえ敵わないのだ。ウルトラソフトのデグラデーションが小さければ小さいほど、アンダーカットが成功する確立は低くなる。翌周にピットインされれば余裕を持って前を抑えられてしまうのだ。

 

 ここでフェルスタッペンがもたついている間にリカルドはウルトラソフトのままプッシュし続けた。その結果、ボッタスとフェルスタッペンには大きな差を付けてコースに戻っている(グラフ②、39周目)。

 

 一方のボッタスは第2スティントのペースが伸びず、リカルドにどんどん差を広げられている。フェルスタッペンもこれに付き合うかたちとなった。60周目にセーフティカーが入った時点で後方との差が大きく開いていたため、フェルスタッペンはポジションを失うことなくピットインしてタイヤ交換。ウルトラソフトでリスタート後にボッタス攻略を狙うが、モナコでは抜くことはできなかった。

 

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 予選ではタイヤの扱いに苦しみタイムをまとめられずにQ2敗退を喫したハミルトン(緑色・線)だったが、決勝では前半戦はダニール・クビアト(青色・線)の後ろでチャンスを待ち、前走車たちがピットインしたところでフルアタックを開始して3台をオーバーカット。

 

 第2スティントでフェッテル以上のペースで走ったのはハミルトンとリカルドだけだ。それでもセーフティカーで差が縮まったサインツを攻略することはできなかった。スロー走行でタイヤが冷えてしまったことはハミルトンにとってマイナスでしかなかった。

 

 

中団のトップはサインツ、完璧なレースを遂行

フォースインディアは不運に泣く

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 中団グループで安定した走りを見せたのはトロロッソのサインツ(青色・点線)だった。常に3強チームの後ろを単独で走り、ひとつもミスなくレースを完遂して最終的に6位フィニッシュ。これまでフォースインディアが続けてきたようなレースをやってのけた。

 

 一方のセルジオ・ペレス(ピンク色・線)は序盤にサインツの後方を走っていて充分に上位入賞のチャンスを手にしていたものの、1周目のフェアモントヘアピンでサインツに追突しフロントウイングの左側翼端板とカスケードウイングを破損。

 

 最終的にはフロントウイングの左側ステーが脱落して16周目にピットインを余儀なくされ、かなり早い段階でのスーパーソフトへのスイッチ、そして中団グループの最後尾に落ちたことで本来のペースで走れなくなり、ペレスのレースはかなり厳しくなってしまった。

 

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 それでも最後は入賞圏まで這い上がってきたことを見ても、ペレスのペースは中団勢の中でもトップクラスだった。しかし本人は予期せぬピットストップからフラストレーションを溜めて集中力を欠いてしまっており、最後にクビアトに強引なオーバーテイクを仕掛けてクラッシュしレースを台無しにしてしまった。エステバン・オコンもピットストップ直後のパンクが悔やまれる。

 

 

マクラーレン・ホンダの実力はウイリアムズ以上、ハース以下?

予選ほど速さを発揮できなかったレースペース

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 マクラーレン・ホンダは2台揃ってQ3に進む速さを見せたが、決勝では12番グリッドのストフェル・バンドールン(オレンジ色・点線)がハミルトンの後方でレースを展開。グラフ②を見ると16周目あたりからは単独走行になっており、ハースのケビン・マグヌッセン(紫色・点線)に引っかかる集団とほぼ同じペースで、後方のフェリペ・マッサ(水色・線)よりは速い。

 

 フェッテルやハミルトン同様に長く引っ張ったが17秒台中盤で安定してはいるもののポジションを争うクビアトやグロージャンとのペース差はほとんどなく、オーバーカットは成功しなかった。Q3に進んだとはいえ、レースペースではそこまで明確な差はなかったのだ。

 

 第2スティントペースはグロージャンやクビアトよりも速かったが、セーフティカーでギャップを縮めてなおかつタイヤも交換してきたペレスにターン1でインを刺され、タイヤカスに乗って止まりきれずバリアにクラッシュしてリタイアとなってしまった。

 

 9位に入ったウイリアムズのマッサより速かったことは事実だが、ペレスとクビアトのリタイアがなければ11位。マクラーレンにとって入賞は近そうで遠かった。ただし中団のペース差は小さく、もし予選のクラッシュがなくQ3でもアタックをして7〜8番グリッドからスタートしていれば、グロージャンのように8位入賞を狙えるところにいたともいえる。

 

 それだけに、ピットスタートで1周目にタイヤ交換をしたジェンソン・バトン(オレンジ色・線)がパスカル・ヴェアライン(水色・点線)に引っかからずに本来のペースで走っていたらどこまで行けたのか、見てみたかった。

 

 2周目を終えた時点でトップとの差は約40秒。もし40周目までトップと遜色ないペースで走れていれば、グラフ②から見て、トラフィックの中で走ったハミルトン、サインツまで抜いて6位まで浮上していた。トップから10秒遅れでもなんとかサインツ攻略は可能だったかもしれない。20秒遅れならマグヌッセンとクビアトの前。おそらく、少なくとも8以下9位までは挽回できていたはずだ。

 

 それだけに1周目にピットアウト時にヴェアラインに先行を許したのは非常に痛かった。

 

(text by 米家 峰起 / photo by Pirelli / data by F1LIFE)

 

 

 

 

 

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