2016 Rd.8 EUROPE

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 第8戦ヨーロッパGPは、ニコ・ロズベルグの独走ポールトゥウインに終わりましたが、レッドブルを含めた中団以下のチームが2ストップ作戦で後退したのに対し、フォースインディアのセルジオ・ペレスが1ストップ作戦を成功させて7番グリッドから3位表彰台を獲得。ルイス・ハミルトンはパワーユニットのセッティングミスでペースを落として5位に留まりました。

 

 決勝の全車全ラップタイムを分析してみましょう。

 

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 下地の色は赤がスーパーソフト、黄がソフト、灰色がミディアムタイヤを表わしています。タイムの赤字はピットストップ、青字は自己ベストタイムを表わしています。

 

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 こちらはピレリによる各車のタイヤ戦略表。

 

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 そして主要ドライバーのラップタイム推移をグラフ化して比較してみましょう。

 

 

後半はペースをコントロールしたロズベルグ

ハミルトンはトラブルなくとも3位ペレス攻略は困難だった?

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 レース全体のペース推移を見ると、ロズベルグ(緑色)はレース前半こそ全体でトップのペースで走行していますが、21周目にピットストップを終えた後のレース後半はそれほどペースが速いわけではありません。

 

 ハミルトンと同様にパワーユニットの制御プログラム設定プリセットであるストラットにデータ設定ミスがあり、本来であれば使うはずのストラットが使えなかったということもあるでしょうが、30周目に2位セバスチャン・フェッテル(赤線)とのギャップが一旦14秒まで縮まったものの、10周でペースを上げて再び20秒弱まで広げると、それ以降は後続とのギャップを見ながらペースをコントロールして走っています。ほとんど危なげのない完勝だったと言って良いでしょう。

 

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 一方のハミルトンは、レース前半は集団の中で遅いペースに付き合わされ、15周目のピットストップ後はクリーンエアでペースを上げたものの、すぐに1ストップのペレス(オレンジ色)に引っかかり、ロズベルグほどのペースでは走れず。

 

 25周目以降はストラットのトラブルが発生し、ステアリング上のスイッチを操作しセッティングを確認しながらの走行を強いられファステストラップを記録する42周目までは問題を抱えたままの走行を続けていますが、それほど大きくペースが落ちているわけではありません。タイヤのデグラデーションがほとんどなく各車のペースが上がっていく中では、30周目以降のペースは遅い部類に入りますが、これはマシンの問題というよりも本人のモチベーションに起因するものでしょう。

 

 42周目にファステストを記録した後は、パワーユニットをセーブするためにモードを変えてペースを大きく落として走行したと言いますが、グラフからもその落ち幅の大きさははっきりと分かります。

 

 もしトラブルがなければハミルトンがどこまで好走を見せたのかはっきりとは分かりませんが、同じ1ストップ作戦を採り翌周に目の前にピットアウトしてきたペレスをすぐにオーバーテイクできなかったところを見る限り、よほどタイヤを上手く使わない限りは3位を奪い取るのは難しかったのかもしれません。

 

 

着実にナンバー2の座を固めたフェラーリ

ライコネンのペース推移も良好

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 第1スティントでは首位ロズベルグに大きく離されてしまったフェッテル(赤線)ですが、これは5周目まで激しいデグラデーションに苦しむレッドブルのダニエル・リカルド(紺線)に抑え込まれてしまったことが大きく影響しています。タイム推移を見ても、序盤のタイム落ち込みは明らかです。

 

 その後は中団勢の中でトップレベルの走行を見せ、後半もロズベルグよりも速いペースで走行。最後までペースは衰えずデグラデーションの小ささも見せています。

 

 しかし第1スティントでリカルドがいなくなった後も逃げを許してしまったことからも明らかなように、メルセデスAMGとのペース差は明らか。バクーのようなパワーサーキットで単独で優勝争いを挑むのは難しそうです。

 

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 キミ・ライコネン(赤点線)はリカルドをアンダーカットするために8周目にピットイン。それ以降はレッドブルを上回るハイペースで走行し、より若いタイヤを履くフェッテルに順位を譲った後のレース後半も好ペースを維持しています。

 

 パワーサーキットのバクーではメルセデスAMGと戦えなかったとはいえ、他凌駕する実力は確かにあるとみて良いでしょう。

 

 

圧倒的な強さを見せたフォースインディア

ヒュルケンベルグにもあった表彰台獲得のチャンス

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 ヨーロッパGPで最も活躍したのはフォースインディアのペレス(オレンジ線)でしょう。レース序盤は他車と同様にリカルドのペース低下に付き合わされてしまいましたが、レッドブルのように激しいデグラデーションに苦しむこともなく、速いペースを維持しています。

 

 ペース推移を見ると、ペレスはスティントの序盤はタイヤの一発を使った後、しばらく数周の間はペースを抑えて走っているのが分かります。こうやってタイヤを痛めないようにマネージメントしているわけです。

 

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 一方のニコ・ヒュルケンベルグ(オレンジ点線)は1周目の接触によるパーツ破損でソフトタイヤを上手く機能させられなかったという松崎淳エンジニアの証言通り、第1スティントの後半はペースが伸び悩んでいます。スーパーソフトに履き替えた第2スティントも終盤はペースが落ち込んで苦しんでいますが、こうして1ストップ作戦のレッドブル勢に抜かれてしまったのもスティントの長さを考えれば致し方ないというところでしょう。

 

 フォースインディアは速さがあっただけに、予選できちんと上位グリッドを獲得してスーパーソフトからソフトへという定石の1ストップ作戦を採っていたら、ヒュルケンベルグのレースはもっと違った展開になっていたかもしれません。

 

 

1ストップ作戦勢の中で最も遅いウイリアムズ

予想外のデグラデーションに苦しんだレッドブル

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 バクーでは目立つところなく終わってしまったウイリアムズ勢ですが、それはグラフの上でも明らかです。バルテリ・ボッタス(水色線)はフェッテル、フェリペ・マッサはライコネンとほぼ同じ戦略を採ったものの、いずれもペースは振るいません。

 

 ボッタスは1ストップ作戦勢の中で一番後のポジションで、前はハミルトン、後はヒュルケンベルグと、ほとんど誰とも戦っていない一人旅の状況だったこともあり、プッシュする立場になかったこともあります。しかし全体的にタイヤを保たせることに専念しており、苦しい走りを強いられています。

 

 ほぼ同じ戦略を採るヒュルケンベルグと較べても、単独で走っているはずのボッタスの方が全体的にペースが遅く、ヒュルケンベルが本来の位置からスタートしていたら簡単にポジションを奪われていたであろうことは明白です。

 

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 レッドブル勢は2ストップ作戦を採り、それでも大きなデグラデーションによるスティント後半のペース低下に苦しんでいるのが分かります。

 

 ルノー製パワーユニットのパワー不足を補うためのもので、極めて薄いリアウイングと、フロントウイングはカナダよりもさらに小さなフラップを装着していました。しかしその代償としてタイヤは厳しく、多くのチームが右肩上がりにペースが上がっていっているのに対し、レッドブルだけはスティントも後半にペースが下がっていっています。

 

 第3スティントのミディアムタイヤでは安定したペースを記録しており、スーパーソフトとソフトタイヤを上手く使うことが出来なかったことが大きな代償となってしまったかたちです。少なくともソフトタイヤを上手く使いこなすことが出来ていれば、フェラーリのライコネン同様に早い段階でスーパーソフトタイヤを捨てても1ストップ作戦で走り切れていたはずですが、レッドブルにはこの戦略は採ることができず、マシンの純粋な速さを生かすことができなかったのです。

 

 

戦略で辛くもハースを下したマクラーレン・ホンダ

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 マクラーレン・ホンダは予選でもQ3に進めず、決勝でも2ストップ作戦で早々にピットインしたため入賞圏外で走り続ける目立たないレースとなりました。

 

 ジェンソン・バトン(灰色線)は、37周目にポジションを入れ換えるまではフェルナンド。・アロンソに前を塞がれてほぼ同じペースで走行。この間にバトンは燃費セーブをしっかりとしており、その後は順調にペースを上げてボッタスと同じペースで走行しています。

 

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 ですが、全体的に見ればほぼ同じ戦略で最終スティントにミディアムを履くロマン・グロージャン(紫色線)と同等かそれ以下のペースでしかなく、1回目のピットストップでアンダーカットに成功していなければグロージャンの後塵を拝するさらに苦しいレースになっていた可能性が大。その点では、傷口は最小限に留めたことになります。

 

 しかし第1スティントと第2スティントのタイヤのデグラデーションの厳しさを見ると、ダウンフォースを削った影響がはっきりと見えています。ICEのパワーアップが急務というホンダ側の見解も当然のことですが、車体側もドラッグの少ない空力効率の良い空力パッケージの開発が必要でしょう。

 

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(text by 米家 峰起 / photo by MercedesAMG, Ferrari, Red Bull, Force India, McLaren, Haas, Pirelli)

 

 

 

 

 

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